ところで、政略結婚のお相手の釣書が、私のこと嫌いなはずの『元』護衛騎士としか思えないのですが?
「え、怪しい……」
「ミラベルお嬢様……。しかし、恐れ多くも国王陛下の直筆サインが」
貴族同士の結婚には制約が多い。少なくとも、叛意の芽を摘むという意味で、国王陛下のお許しがなければすることが出来ない。
とはいっても、釣書の段階から、国王陛下直筆のサインがあるなんて聞いたこともない。
それとも、私が辺境伯領の立て直しのために社交界から離れて、走り回っている間に常識は変わってしまったのだろうか。
「…………だって、この釣書って、どう見ても」
露骨に目を逸らされたところを見ると、お給料が払えないにもかかわらず、没落したコースター辺境伯家に戻ってきてくれた得難い執事であるセイグルも、私と同じ見解なのだろう。