ところで、政略結婚のお相手の釣書が、私のこと嫌いなはずの『元』護衛騎士としか思えないのですが?
身長は高く、青い目と淡い金の髪。
騎士として働いていて、剣の腕はマスター級。
子爵家の三男だが、その活躍が認められ、王太子殿下の近衛騎士に抜擢された。
どう考えても、この釣書の内容に当てはまる人を、私は一人しか知らない。
でも、私には選ぶ権利も余裕もない。
「――――アルベール・リヒター」
あれから3年だ。
アルベール・リヒターは、その手腕と武功の数々、とくに北極星の魔女を打ち取った功績で、王太子殿下の近衛騎士に任命されたという。
近衛騎士として王太子殿下の覚えもめでたい彼は、王都で英雄だともてはやされて、叙勲と領地を賜る話も出ているという。
うわさでは、お姫様と婚約するかもしれないって……。
「大出世……。だから、もう関わることなんてないと思っていたのに」
そう、だから私は、自分の気持ちにけじめをつけて父が婚約者を探すのを了承したのに。
ため息をついた私のことを、慈愛を込めた視線で見つめる執事のセイグル。
白髪交じりの髪と、こげ茶色の瞳。家族みたいな存在の彼が口を開く。