ところで、政略結婚のお相手の釣書が、私のこと嫌いなはずの『元』護衛騎士としか思えないのですが?
「僭越ながら、これ以上にない婚約相手と存じます」
「そうね……。辺境伯という名がふさわしいと思うわ」
「そういう意味ではないのです」
アルベールの言動を振り返る。
その行動は、優しくて、護衛騎士として完璧だった。
でも、やっぱりあの視線、「……は」と「は……?」だけの返答。
――――嫌われている! 嫌われていたに違いない!
「えっと、お断りのお返事を」
「不可能です。国王陛下直筆のサインがある以上、指定の日時に王城へ行かなければ、コースター辺境伯領に叛意があるとみなされます」
「……わかったわ」
指定の日時まで、それほど猶予はない。新しいドレスをなんとか工面する時間もない。もう、出発する必要がある。
――――こんな、ギリギリの日程。嫌がらせかしら?
ため息を一つつくと、辺境伯令嬢として最低限必要な役目のために残しておいたドレスに袖を通した。
それは「全部売ってしまっていい」と言ったのに、なぜか辺境伯家の従業員たちが、絶対に売ってはいけないと頑ななほど結束したため売らなかった、青いドレスだった。