ところで、政略結婚のお相手の釣書が、私のこと嫌いなはずの『元』護衛騎士としか思えないのですが?

 ***

 婚約の釣書には、ご丁寧に王都までの転移魔法陣まで同封されていた。
 
 う……。貧乏になった今となっては、この値段にクラクラする……。
 たぶん、その魔法陣は、アルベールが去るときに渡したブローチと同じくらいだ。

「使い捨て……」

 魔法陣は二人分だ。
 振り返ると、いつもの執事服から、辺境伯騎士団の控えめな金の縁取り、黒い詰め襟の騎士服に着替えたセイグルが頷いた。

「セイグルが、カッコいい……」
「今となっては、英雄殿には遠く及ばないこの身ですが、必ずやお嬢様をお守りします」
「え……。どうしてセイグルが私の婚約者じゃないの」
「愛する妻がおりますゆえお許しを」

 冗談を言うと、セイグルが娘を見るように笑う。
 私は知っている。セイグルの一人娘は、辺境伯騎士団長として活躍していた時、病で亡くなった。
 それ以来、騎士を引退したセイグルを、父が引き止め執事をしてもらっていたのだ。

 だから、どこかいつもセイグルが私を見る目は、娘を見るようでもあった。

 エスコートの手が優雅に差し出された。
 私は、ほんの少しだけ緊張を緩めて、転移陣の上に久しぶりに履いた、高いヒールの靴で乗った。

 ***

 そしてたどり着いた、王城。

「あの、セイグル?」
「ものすごい歓迎ですね……。もしかしたら、英雄の凱旋並かもしれません」
「いや、それは話を盛りすぎでしょう?」

 けれど、思わずうなずいてしまいそうになるくらいの人で溢れている。
 その中を進む私とセイグル。
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