ところで、政略結婚のお相手の釣書が、私のこと嫌いなはずの『元』護衛騎士としか思えないのですが?

 それでも、命の危機に一度だけ発動するそのブローチは、もう割れている。
 それは、アルベールが命の危機に陥ったという証拠だ。

「――――それでも、清々しい気持ちでした。北極星の魔女と、相打ちになった時」
「…………」
「あなたに嫌われてしまったことは、ほんの少し辛いけれど、それであなたが幸せになれるなら、俺は」
「アルベール」
「あなたの愛する辺境伯領を巻き込んだのは、俺です」

 少し離れた体。それが悲しくて、悔しくて。

「――――どうして! アルベールのせいじゃない!」
「……どうでしょうね? それなのに、あなたがこんなもの渡したせいで、生き残ってしまった」

 そんな言葉と裏腹に、手のひらの上に乗ったブローチを見つめるアルベールの瞳は、愛しいものを見つめるような真っすぐなものだ。

「魔女を殺したせいで、魔女の呪いは俺にうつってしまったのかもしれません」
「え?」

 やっぱり呪われていた?!

「呪いというか……。執着でしょうか」

 もう一度、息ができないくらい強く抱きしめられた。
 幸せな腕の中。私が待ち望んでいた場所は、たぶんここしかない。

「あなたを愛しています。きっと、ほかの人間に取られてしまったら、魔女のようになってしまうほど」
「アルベール」
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