君に、ブルースターの花束を

ソフィアからチラチラと視線を感じたものの、ジークフリードは一度も彼女の方を見なかった。妻という存在は、バイルシュミット家の子孫を残すための道具。それ以上の感情を抱く必要はない。父から言われた言葉を心の中で繰り返し、顔合わせは終わった。



顔合わせが終わってから、ソフィアはジークフリードの家に移り住み、顔を合わせることが当たり前となった。その度にソフィアは話しかけてくる。

「ジークフリード様、コーヒーはいかがですか？」

「ジークフリード様、甘いものはお好きですか？ケーキを焼いたのですが……」

「ジークフリード様、今日は寒くなるそうです。外出の際はこちらのマフラーを巻いてください」

話しかけれた時、ジークフリードは「ああ」とだけ返し、先ほど自分が淹れて飲んだというのにコーヒーを飲み、それほど好きでもないのに甘いケーキを食べ、ソフィアが用意したと思われる深緑のマフラーを巻いて外出した。その度にこう思ったのだ。