君に、ブルースターの花束を
支度をある程度終えると、父から呼び出された。だが、父の口から言われる言葉などずっと屋根の下で暮らしてきたジークフリードにはわかる。

「ジークフリード、お前がもしも戦場で死んだとしてもそれは名誉ある死だ。お前は英雄としてその名を刻むだろう」

「はい、承知しています」

義足をキイキイと鳴らし、葉巻を吹かしながら父は言った。無表情のままジークフリードは父の言葉を聞き、頭を下げて部屋を出る。もう戦地へ向かわなくてはならない。こうしている間にも、国が侵略されてしまうかもしれないのだ。

荷物を入れた重いリュックを背負い、ジークフリードは「行って参ります」と父と母に声をかける。何故かソフィアの姿はなかった。家を出て歩いていたジークフリードだったが、後ろから誰かが走ってくる音に振り返る。そこには、ソフィアがいた。

「ジークフリード様!」

走ったせいか美しい髪が乱れ、ドレスや靴には泥汚れがついてしまっている。だがそれを気に留める様子もなく、ソフィアはゼェハァと荒い呼吸を整えた後、ジークフリードに何かを差し出した。
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