君に、ブルースターの花束を
「ジークフリード様の好きなムニエルを作りました。お風呂の準備もできています。ゆっくり体を休めてください」

「あ、ああ……」

嬉しそうに笑うソフィアに、ただそう言うことしかできない。押し花のお礼をまだ言えていない。だが、何と声をかければいいのかわからず、愛のない政略結婚相手なのだからという気持ちから、ジークフリードからソフィアに声をかけることはなかった。

だが、戦場から家に帰って数日後、再びジークフリードは戦場に行くことが決まった。負けたアスタリカが近隣にある小国を攻め始めたからだ。

「あの国とこの国は同盟を組んでいる。必ず、助けるのだぞ」

父に口酸っぱく言われ、「はい、わかりました」とジークフリードは返す。アスタリカが攻めている小国は、金や銀がよく採れる。完全に侵略されてしまったら、貿易に大きな支障が出ることは目に見えている。そのため、国の政治家などは何としてでも助けろと息巻いている。

「ふぅ……」
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