神さま…幸せになりたい

不穏な足音

カーテンの隙間から太陽の光が差し込んできて目が覚めた。背中から抱きしめてくれる太くて逞しい腕があった。
「幸せ…」思わず口に出すと「俺の方が幸せだ」と声が聞こえて思わず振り向くとチュッとリップ音を鳴らしてキスが降りてきた。
「おはよう詩織」
「おはよう亘くん」
そんな当たり前の挨拶が嬉しくて亘くんの胸に顔を埋めたら、頭を優しく撫でてくれる。
「亘くん今日は?」
「今日は夜勤だな。詩織は?」
「準夜勤」
「そうか…送ってあげられないけど大丈夫か?」
「うん。電車に乗れるように早く帰るよ」
「じゃあまだ大丈夫だな?」
「ん?」
「まだ詩織を腕の中に閉じ込めておける」そう言って唇を重ね、朝の光の中で愛し合った。お互いの肌を合わせれば、ずっとこのままでいたいと思ってしまう。



「川原さん、葵くんおやつ残しちゃったの。お熱はないようだけど夕飯食べれるか見てきてあげてね」
「はい。わかりました。行ってきます」

「葵くん食べれてる?」
「…いらない」
「あら…残しちゃったね。どうしたの?」
「グスッ…うぅ…」
急に泣き出してしまった。
背中を撫でて大丈夫。大丈夫。と声をかける。何か不安なことでもあったのか?嫌いな食べ物でも入ってた?考えても浮かんで来なかった。どうしたらいいのかな?と思ったとき、あることに気がついた…
「葵くん、ママ今こっちに向かってるからね。お仕事どうしても抜けられなかったんだって。ママが来る前に頑張って全部食べて褒めてもらおうか?」
「ママ…くるっ?」
「うん。大丈夫だよ」
「じゃあっ…食べるっ」
そう言って食べてくれた。
食べてる途中で「遅くなってごめんね。葵ちゃんと食べてえらいね」
頭を撫でながらお母さんから褒めてもらうと葵くんはニカッと笑った。
「じゃあお願いします。葵くんまた来るね」
「お姉ちゃんありがとう」
とっても可愛い笑顔だった。

入院するだけでも不安なのに特に小さい子はお母さんと離れると、余計に不安になる。私達がサポートできるのはほんの少し、やっぱりお母さんには敵わない。

「葵くんご飯食べてます。お母さんが来なかったのが寂しかったみたいです」
「まだ6歳だもんね。仕方ないわね」
「回収行ってきます」

無事に今日も終わり帰り支度をしていた。今日は亘くん夜勤って言ってたな。家に帰っても1人か…寂しいな…


「ねぇ…さっき亘先生、病院長と話してるの聞いたけど…そろそろ帰って来るの?」
「そうみたい…」

誰が?誰か帰ってくるのかな?その時の私は誰が帰ってくるのか聞かずに家に帰った。あの時、話を聞いてればよかったのに…
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