恋愛観測
「あたしね、怖いんだ」

 自分は田舎モノだから、って一線を引いちゃって、それ以上踏み込めずにいるんだ。
 それは流行だったり、環境だったり、時間だったり……

「時間?」

 なぜ時間が恐怖の対象になるのだろう? 日雀がきょとんとした顔で口を開けば、香子が苦笑する。

「だって、時間の流れが早すぎる。なんでみんな慌ててるの? それともあたしがのんびりしすぎてるの?」

 三分するかしないかで来る電車、それなのに当然のように駆け込み乗車をする人たち。どうして次を待てないの? 十分以上待つわけでもないのに。
 一日に三本しか走ってないバスじゃあるまいし、そこまで切羽詰まって生活している人たちが、香子には信じられない。

「……でも、それが都会の暮らしなのかなぁ」

 空気に溶け込めない。焦燥ばかり空回り。
 そんな香子の言葉を、日雀は黙って聞きつづけている。

「だから、あの星座盤見た時、前いた場所のこと思い出して……そういえば毎日空、見る余裕があったのになぁって」
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