ボンドツリー
二つ目の記憶
僕がママとパパを失ったのは5年前の大雨の日だった。

僕が10歳の時だ。

僕はママもパパも大好きだった。

ママがヴァイオリンを弾き、パパと僕が歌う。

その日も僕らはそうして過ごしていた。

雨の音にも、風の音にも負けない声で。

パパとママにもらったストローハットをかぶりながら。

いつもならモニュメントのもとで歌うのだけれど、外には出られないので今日は家が演奏場だ。

家でも十分楽しかった。

歌っていると、外で何かが倒れたような音がした。

音は川のある方向からした。

そこにはヴァイオリンを置くための大きな倉庫がある。

「何の音だ?」

パパが気になって外を見に行く。

ドアが嫌な音を立てて開いた。

その瞬間、大量の水が流れ込んできた。

一瞬にして流水は僕ら3人を飲み込み、暗闇へと引きずり込もうとする。

僕は懸命に家の柱に掴まった。

すると何かが飛んできて僕の頭に当たる。

視界が一気に暗くなっていった。

次に僕が目を覚ましたのは晴天の日だ。

パパが不安そうに僕を見ている。

そこに…ママはいなかった。

そして帰ってくることはなかった。

パパの性格は変わりひどい父になった。

僕のストローハットは例のツリーの枝に引っかかっていて見つけることができた。

僕はその日、ママとパパの両方を失った。

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