桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 ではごゆっくり、とメアリーが出ていくと、美桜はソファに座ってふうと一息ついた。

 そして高級そうなティカップに淹れられた紅茶を一口飲む。

 「はあ、おいしい!なんだろう、日本の紅茶と違って全然渋みがないよ。ねえ絵梨ちゃんも…」

 そこまで言ってベッドに目をやった美桜は言葉を止めた。

 絵梨はベッドに飛び込んだ時そのままに、うつ伏せになって眠っている。

 ちょっとやそっとじゃ起きそうにない。

 (仕方ないか、私だって今までずっと寝てたもんね)

 美桜は絵梨を起こすのを諦めて、紅茶に添えられていたクッキーをつまむ。

 (これってあれだよね。イギリスの有名な赤いパッケージの、えーっと、あ!ショートブレッドだ)

 日本でも食べたことがあるのに、口に入れると思っていたよりずっとおいしい。

 (なんでだろう、日本で食べたものと違うのかな?)

 そう首をひねりながら紅茶をもう一度口に含んで気付いた。

 この紅茶にとても良く合うのだ。

 紅茶のおいしさが日本と違うのも、きっと茶葉と土地の水の相性が良いのだろう。

 (なるほどね。本場のものは、やはりそこで味わうのが一番って訳ね)

 一人で納得してティタイムを堪能してから、さてこれからどうしようかと考える。

 絵梨は当分起きそうにないし、このままゆっくり寝かせてやりたい。

 (そういえば仁くんってどこだろう?)

 ふと思い立ち、仁を探しがてら、美桜は部屋の外を探索してみることにした。
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