桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 そっと廊下に繋がるドアを開けて、まず左右をきょろきょろと見比べてみる。

 同じような廊下が続いているが、左側はさっきメアリーに案内されて通ってきた道だ。
 進めばエントランスに繋がっているだろう。

 (じゃあこっちね)

 美桜はドアを静かに閉め、廊下を右に進んでいった。

 しばらくしてから気付く。

 (あれ?なんだか空気が違ってくる?)

 どういう訳か、湿気やにおい、気温までが少しずつ変化しているような気がするのだ。

 (なんかこう、スパとかプールの入り口みたい。そんな訳ないか)
 
 軽くそう考えながら突き当たりを道なりに左へと向かった美桜は、突然現れた一面緑の世界に目を見開いた。

 まるで自分は、現実から離れてどこか違う世界に来たのかとさえ思う。

 天井も見えず、どこが端なのかも分からないほど樹木に埋め尽くされた空間に、ただただ圧倒されるばかりだった。
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