誰か僕に気がついて
僕は生きている
あの日、デパートの屋上で
どん底の僕は
救われてしまった
買い物から帰る
母さんの目の前を
一羽のつばめが横切った
つばめの行く先を
目で追う母さんは
はるか先の
ビルの屋上に
僕の姿を見つけたと言う
一羽のつばめが
切れる寸前の
僕と家族の絆を
つなぎとめてくれた
信じられない奇蹟だった
僕の借金は
ばあちゃんが家を売って
チャラにしてくれた
「大事な達也を救えるなら
一千万なんて安いもんさ」
ばあちゃんは
にっこり笑ってそう言った
ばあちゃんが大切にしていた
花畑はなくなってしまった
ごめんな、ばあちゃん!
僕がいつかきっと
もっとでかい花畑を
作ってあげるから・・
ついでに
ばあちゃんがこだわってる
農薬や化学肥料を使わない
神様のいのちを大事にした
野菜畑も作ってやるよ
ばあちゃんのやさしい花に
僕はどれだけ癒されたことか・・
「台風はね、神様の大掃除さ、
我が家もちょっとした、台風が
起きて大掃除してもらえたな」
すっかり背中のまるくなった
ばあちゃんを
もう絶対に
困らせちゃいけない
心底そう思った
父さんは異例な回復をし
この秋から仕事復帰が
できるらしい
退院の日
父さんは病院の出口で
人目も気にせず
僕の前に土下座した
床に頭をこすりつけるようにして
父さんは言った
「達也、許してくれ!
父さん本当にだらしがなかった
だけど達也のおかげで
目が覚めたよ
達也がボロボロになるまで
何も気づかなかった父さんを
許してくれ
父さん、神様からもらった
この命で
もう一回やり直すよ
これから一生かけて
達也の心の柱に
なれるように
父さんがんばるよ
父さんきっと・・
いや、絶対にがんばってみせる」
父さんの目から大粒の涙が落ちた
はじめて見る涙だった
子供に詫びることのできる父親を
僕は誇りにさえ思えた
怖いくらい真剣な父さんの顔を
しっかりと目に焼き付けた
そして一生忘れまいと思った
僕の中から生きる力が
こみ上げて来た
こんな僕でも
誰かのために
役に立ちたい!
そのために僕は力の限り
勉強しようと思った
たくさんの言葉に傷つけられた
その屈辱は
たくさんの人の心を救うために
生かしていこう
固く心に誓った