春の花咲く月夜には
『ところで。今週の金曜日、仕事が終わった後になにか予定はありますか。なかったら、飲みにでも行きませんか』


(・・・えっ!?)


突然のお誘いだった。

仲良くなったら色々聞こうと思っていたけど、こんなに早く飲みに行く機会がこようとは・・・。


(・・・でも、飲みって・・・、紗也華も一緒かな?)


私と賀上くん、2人だけで飲みに行く・・・という状況は、想像しにくいことだった。

けれどこの文章だけではわからないので、一応確認しておこう。

『予定はないのでいいですよ。紗也華も一緒ですか?』

『いえ。オレと心春さんと、2人で行きたいと思ってるんですが。どうでしょう』


(ふ、ふたり・・・)


私としてはまさかと思う、「2人飲み」というお誘いだった。

嫌なわけではないけれど、どうしよう、と正直悩む。


(予定はないって書いちゃったけど・・・、賀上くんと2人で飲むって、ちょっと緊張するんだけれど・・・)


そもそも私は、元村先生以外の男性と2人で飲みに行ったことがない。

男友達はひとりもいないし、事務課は女性が多いので、職場でも、気軽に飲みに行くような男性は一人もいなかった。


(なのに突然、賀上くんと2人とか・・・。緊張するし、会話、ちゃんと続くかな・・・)


会社で人気の後輩男子。

そしてすっかり私がファンである、「T's Rocket」のギタリスト。

だけど、ここで紗也華を誘えば、飲みに行ってもバンドの話はNGだ。

彼はきっと音楽のことやほかの話もしたいから、「2人で」って言ってるんだよね・・・。


(どうしようか・・・、でも、賀上くんに聞きたいことは色々あるし・・・)


ちょっと・・・、いや、だいぶ緊張するけれど、もっと話してみたい気持ちはあるのだし、せっかくだから行ってみようか。

それに、もしかしたら紗也華には言えない仕事の悩みがあるかもしれない・・・。


(・・・うん。行ってみよう)


ちょっとドキドキするけれど。

私は行こうと決意して、「OK」のメッセージを彼に返した。




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