春の花咲く月夜には
(・・・やっぱり私・・・、賀上くんを好きになっている・・・?)


笑顔だけじゃない。

穏やかに話す彼の顔、手を握られていた感触や、電車の中で抱きとめられたことを思い起こすと、頬がどんどん熱くなる。

その感覚に耐えきれなくなった私は、大きく息を吸い込んで、一旦落ち着くことにした。


(・・・う、うん。そうだ、まずは一旦落ち着いて・・・)


冷静に、冷静に。

今日のことを・・・賀上くんへの気持ちをよくよくちゃんと考えるんだ。


最初は別にーーー緊張は確かにしてたけど、恋愛対象として意識していたわけじゃない。

だけど、帰り道で色々あって、意識せざるを得なくなってしまった。

本当に、急展開という感覚で。

だからこそ、今、私は自分の気持ちに戸惑っている。


(賀上くんだって、それまでそんな素振りはなかったのに・・・)


本当に、どうして急にあんなふうに・・・好意を見せてきたのだろうか。

それとも・・・彼はやっぱり酔っていた?

お酒はかなり強そうだったし、こうして真面目な文章を書いて送ってくれてるし、酔っぱらっているようにも見えなかったけど・・・。


(・・・でも・・・もし本当に、酔っていただけだったとしたら・・・)


「・・・」

寂しい、と、小さく胸の痛みを感じたその時、ブブッと音を出してスマホが震えた。

もしかして、と、彼の顔を脳裏に浮かべ、私は急いでスマホの画面に目を向けた。

けれどそこにはーーーーー、6年ぶりに見る名前・・・元村先生の名前があった。








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