春の花咲く月夜には
「梅の山駅」から、普通に歩けば15分程かかる距離。

普段なら、それくらいかかる私の自宅マンションまでは、タクシーなら5分くらいで到着だ。

エレベーターに乗って5階で降りて、廊下を少し歩いた505号が私の自宅。

ガチャ、と音をたてて鍵を開け、電気をつけて手洗いうがいをすませると、リビングに行ってすぐにスマホとスケジュール帳を取り出した。

今月のページを開いてみると、来週も再来週もさらにその次も・・・土日はまるで予定なし。

そんな気はしていたけれど、改めて見て、そうだよね、と苦笑い。


(独身の友達の中で彼氏いないのは私ぐらいだし・・・、奈緒とも会う予定はないし)


賀上くんに、「土日は全部暇です」と正直に言うのは恥ずかしいとも思ったけれど、暇なことは事実だし、スタジオを予約すると言っていたから、候補の日時は沢山あったほうがいいだろう。

早速メッセージアプリを起動して、賀上くんに今日のお礼と土日は全て予定がないことを書いて送った。

するとすぐに既読がついて、返事が届いた。

『こちらこそありがとうございました。楽しかったです。では、来週の土曜にスタジオが空いていたら予約しておきます。』


(『はい。よろしくお願いします』・・・と)


入力し、送信のボタンを押した。

そして、先ほど来た彼からのメッセージをもう一度、読み返す。


(・・・ふふ、やっぱり真面目な文章だ)


彼にとって私は先輩なのだから、当たり前かもしれないけれど。

一緒に飲んだ帰りだし、もう少しラフに返してくれてもいいんだけれど・・・。

もし、今より仲良くなったなら、もっと気軽な文章を私に送ってくれるのだろうか。

それとも、メールアプリのやり取りは、誰とでもこういう感じかな?

友達とは、どういう感じなんだろう。

スタンプとか気軽に使っているのかな・・・。

あれこれと想像を膨らませていると、ふっと彼の笑顔を思い出し、頬が熱くなるのを自覚した。

これは・・・と、さっき改札口で感じた気持ちを思い出す。
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