春の花咲く月夜には
それから、平日が流れるように過ぎ去って、約束の土曜になった。

今週は、会社で賀上くんと一度も会うことがなかったために、会うのは約一週間ぶりとなる。

ーーー彼は今、どんな気持ちでいるだろう。

やっぱり酔っていたんじゃないか、約束を後悔していないだろうか・・・、そんな不安がふっと頭をよぎるけど、楽しみにしてくれていたらいいなと思う。


(私は・・・、なんだかんだ言いつつも、ずっと楽しみにしてるんだよね)


もちろん今も、不安はあるし緊張もある。

けれどそれより、楽しみな気持ちの方が明らかに大きくなっていた。


(賀上くんと会うのももちろんだけど・・・、人生初のギターだし)


楽器を教わるわけだから、へんに気合いを入れていくのもおかしいかとも思ったけれど、いちおうデートでもあるし、そのつもりでメイクをし、着ていく服を考えた。

とはいえギターを教えてもらうのに、適した服はあるはずで。

タイトスカートはきっとダメ、ワンピースは・・・動きやすければ平気かな?

散々前日悩んだ挙句、袖にボリュームのある白いデザインブラウスに、黒地に小花模様の入ったロングスカートを合わせてはいた。

髪は邪魔にならないように、アップにしてヘアアクセサリーをつけておく。


(最近の私にしては、結構頑張ったと思うけど・・・)


服、これで平気かな。

メイクはこれ・・・ヘンじゃないよね?

頑張ったけど、頑張った感が出ませんように・・・。


色々なことを考えて、心は落ち着かないけれど。

これから彼に会うことが、私はやっぱり楽しみだった。




< 83 / 172 >

この作品をシェア

pagetop