記憶を、なぞる。【完】

04

☽⋆⋆゜



「…それで?」

「だから、今話した話で全部なんだってば」


続きは?その先は?とでも言いたげな冷ややかな目からそっと視線を外して、アルコールに口をつけた。



「え、実は両想いでしたってパターンで、またねって連絡先交換したのに1週間何も来ないし、送ってないって話で終わりなの?」

「だから、そう言ってる」

「中学生なの?あなたたち今中学生なの?」



論外なんですけど。とビールジョッキを片手に持つまや子が大きなため息をついている。

自分だって幼なじみとよく分からないところで止まってるくせに〜と思うけれど、今はわたしのためのお話の最中なので黙っておく。


詩乃に送って貰ってから1週間が経過した。

まや子の言う通り、この一週間詩乃とは連絡を取っていなくて、凹んでいたら今お説教をされているところだ。


「ていうか、今どきの中学生のほうがもっと大人な恋愛してるしね。それかあんたたち、会えない間に愛を育むタイプなの?」

「…ちがう」

「なら、何してるの?」

「…」


まや子の言う通りなので何も言い返せないのが悔しいし、恥ずかしい。20歳すぎているのに、ピュアすぎなくらいピュアな恋愛をしている自覚はしっかりとある。


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