記憶を、なぞる。【完】
「あの日さ、ふたりで消えたからホテルにでも行って盛り上がってるのかと思ったら、なにその純愛エピソード」
「…ホテル!?」
「そんな驚くこと?再会していい感じになって〜なんて珍しいことじゃないでしょ。あんたたちがピュアすぎんのよ」
わかってるし、気にしてるんだからそんなにピュアやら、純愛やらと言わないで欲しい。今1番聞きたくないワードかもしれない。
「とりあえずさ、連絡してみれば?」
「…いま?」
「あんたね、そんなゆっくりしてると誰かに取られちゃうよ?光永くんかっこいいんだから。それに、あんたから連絡先聞いたんだったら、あんたから連絡するのが普通でしょ?」
「…」
言われてみれば、確かにそうだ。
会いたいってあのとき言っちゃったのもわたしだし。待っていたら、こないのかもしれない。
「よし、連絡してみる」
「うん。頑張って」
ピュアピュアな恋愛は、もう卒業する。
ありがとうとまや子に頷くと、まだ一度もトークしていないまっさらな詩乃とのトーク画面を開いた。
そしていまの気持ちを纏めて一文だけ送れば、「なんて送ったの?」とまや子がスマホを覗き込んでくる。