きみと3秒見つめ合えたなら
「それくらいにしたら?」
誰かが割って入ってきた。

「本人が何もないってんだから、何もないんだよ。大勢で一人に言いがかりつけるって最悪だな。大体、証拠でもあるのかよ。そんなことやってるから、いつまで経っても恭介だって振り向かないんだよ。」 

 早瀬くんだった。

「は、早瀬さん...しょ、証拠はないんですけど、見たのは確かで...」
女子たちが驚いていた。
いや、私も驚いた。

そして小声でブツブツ言うも、

「相川にごちゃごちゃ言う暇あったら、恭介に聞けよ。聞いたのかよ?」 

「桐谷くんには...」
彼女たちは蚊の鳴くような声で何を言っているかはわからなかった。

「もうこんなデマ流すなよ。相川がどんな思いしたと思ってんだよ。絶対流すなよ。流したら、恭介にお前らがデマ流した犯人だって伝えるから。」
 
 早瀬くんがそう言うと、彼女たちは
「わかりました」と言って、その場を後にした。


「早瀬くん、なんで?」
「わたし。」校舎の影から美帆が出てきた。

「絢音がなんかヤバそうなの、みつけちゃって。私なんかが行っても、泥沼になりそうだから、聖斗、呼んできちゃった。」

「美帆ー。」
私は美帆に抱きついて泣いてしまった。

「女子同士のほうが話しやすいだろ?」
そう言って早瀬くんは校門に向かって行った。
 

 早瀬くんは困ったときに、いつも現れて、私を助けてくれる。
 やっぱり好きになる人を間違っただろうか。


「...にしても、なんなの、あの子たち。酷くない?顔が普通って。よく見なさいよね、絢音の顔。こんなかわいいのに。」
私は顔を横に振る。

「落ち着いたらでいいからさ。絢音が話したいことあるんだったら、いつでも聞くから。」
「美帆、優しいね。」

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