きみと3秒見つめ合えたなら
 2年になると、クラスは別れ、相川絢音に会うことはぐんと減った。

 唯一、部活でグランド練習が同じ日は見かけることができた。

 今日は運良く、どちらの部もグラウンド練習だった。休憩中、チラッと陸上部を見る。

「陸上部、新入生、多くない?見て。」
マネジャーの美帆が隣にやってきた。

 美帆は小学生の時、学童で仲良くなった。唯一、女子で親友と言える。

「え?あんなにいるの?」
もう一度、陸上部を見たとき、相川絢音と目が合った気がした。

「ふ〜ん、そうなんだ〜。」
「何が?」
「何でもな〜い、ふふ。」
美帆が意味深に笑う。
「何でもないこと、ないだろ?」
美帆には隠し事をしてもすぐにバレる。
もしかしたら、相川のこと、気づいてたりして。

「あ、あれって、恭ちゃんじゃない?」
美帆が話をそらして、陸上部の方を指差す。

 そこには桐谷恭介がいた。

 小学校の学童で、恭介はよくオレと美帆についてきて3人で遊んでたけど、中学に入ったら、恭介とはほとんど会わなくなっていた。そういえば、美帆は恭介のこと、弟みたいにかわいがってたっけ。

「あ、ホントだ。久しぶりに見た。恭介、足速いし、サッカー部には入らないかなー。」
恭介を見ていると、見せかけて、オレは相川を目で追っていた。


「足が速いから、恭ちゃんは陸上部にはいるんでしょー。」
美帆がオレに突っ込む。

「あ!いいこと思いついた!」
美帆が嬉しそうにオレに言う。
「なんだよ?サッカー部に恭介を誘う方法か?」

 この時はこんなのんきな事を言っていたが、後に恭介とあんなに絡む事になるとは予想だにしていなかった。

「ちがうわよ。今度の練習試合、さやか先輩、来れないんだわ。私、一人で大変だから、誰かに手伝ってもらおうと考えてて。聖斗、誰がいい?」

 なぜかニヤニヤしている美帆。
 何か企んでるな、コイツ。

「オレは誰でもいいよ。」
と言って練習に戻った。

 本当は相川絢音がいいけど...
そんなこと、何か企んでいる美帆には口が裂けても言えない。
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