きみと3秒見つめ合えたなら
 県大会の前日。春菜からメッセージが届いた。

『恭ちゃん、相川先輩との最後の部活になるかもしれないじゃん?いいの?このままで。
 春菜、ずっと2人見てきたけどー。何かもどかしい!全然、話もしないじゃん。
 でもね、相川先輩、時々恭ちゃんのこと、見てたよ。』

『最後かもな。でも、オレ、先輩の迷惑になることはしたくないから。』
とだけ、返信した。


 出発当日。

「絢音先輩の隣ゲットー。」春菜が嬉しそうにはしゃいでいる。

「桐谷先輩、こっち座ってー」と、オレにも声を掛けてきた。

「仕方ないなぁ」と言って、オレはそこに座った。

 春菜がオレの手を持って、自分の手のひらと合わせた。
 何やってんだ、コイツ?と思ったが、遊びに付き合ってやるか、ぐらいな気持ちでいた。

「絢音先輩、みてみてー。桐谷先輩の手、めっちゃ、大きいんですよ~。」
 
 なんのつもりだよ...と思ったも遅く、相川先輩は春菜の方を見た。
...久しぶりに目があった。春合宿以来かも。
 
 相川先輩は明らかにびっくりしていて、
「は、春菜ちゃんが、小さいのよ。」なんて言っていた。。

「えー。そうですか?絢音先輩も桐谷先輩と合わせてみてくださいよー。」

 春菜、今日は、どうした?心の中でさけぶも、春菜に聞こえるわけもなく、バスの中が一瞬静まる。

「おーい、春菜。テンション高いぞー。遠足じゃないんだから、もうちょい静かにしようぜー。」
 山崎くんが後ろから叫んでいた。バスの中に笑いが起こる。

 相川先輩と春菜は、コソコソ言いながら笑い合っている。
 仲いいな、本当に...春菜に嫉妬する。

 まだそういえば、相川先輩と手、繋いだことないな...なんてぼんやり考えていた。
 手のひら、合わせてみたかったな、なんて少し思ったりもした。
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