きみと3秒見つめ合えたなら
 小学校時代、自分で言うのは憚られるが、私はかわいかったらしい。
そして、結構、モテていたらしい。

 それが、一部の女子の反感を買い、好きでもない相手と両思いだとウワサを流されたり、無理やりペアを組まされたり、何かと嫌がらせを受けた。


 ある日、いつも嫌がらせをする女子たちに勇気を出して言ってみた。

「どうして私と田中くんが付き合ってるとか、言うの?違うから、やめてほしい。」

 彼女たちは言った。 

「絢音ちゃんって男好きだよね?男子だったら誰でもいいんじゃないの?
ちょうど田中くんが絢音ちゃんのことが好きだって言ってたから、くっつけてあげようと思って。」

「男子とお話するとき、いつもニコニコして。かわいいからってわざとやってるでしょ?私たちは男好きの絢音ちゃんのために、男子とくっつけてあげてるの。」

 びっくりした。そしてショックだった。

 当時は小学生なりに、好意を抱く男子もいたけど、自分の想いを伝える...というのとは、ちょっと違うくて。

 そんな中、好きでもない男の子とくっつけられて、何も言えなかった私は、自分の気持ちを押し殺す辛い思いだけが積み重なっていった。


「私、そんなつもりない。」
この言葉を発するのが、精一杯だった。
「じゃあ、男子にわざとらしく笑顔でお話するのやめてよ。」

 自分では普通に接していたつもりだったけど、それからすごく女子の目がこわくなった。

 そして次の日から、男子とは必要以上、話はしなくなったし、話しかけられても素っ気ない返事しかしなくなった。

 そうすると、女子からの嫌がらせも無くなっていった。


 そんなこんなで、男子と喋らなくなった私は、今度は男子との接し方がわからなくなった。
 ただ、それは同年代に限ったことで、先生とかかなり年上の人には普通に接することができる。

 あの日から、つらい思いをするくらいなら、男子なんかと話さなくてもいいし、恋なんてしなくてもいいと思った。
 日常を平穏無事に過ごすことが一番。


 恋愛でキラキラした青春ドラマのような高校生活は憧れるけれど...

 友梨みたいな女友達に恵まれて、女子で騒いでいるのが楽しくて、中学生の頃は男子なんてどうでもよかったのも事実。

 だけど高校生になって、周りが恋の話をすると、やっぱり少し羨ましくも思えた。

 でも、小学生からのトラウマか、男子と会話するのが怖くて、できない。

 そして、素っ気ない女子をかわいく思う男子もいなくなり、私のモテピークは小学校時代で終わり、現在の奥手な私に至る。


「だから、私はモテないし。なんか好きな人もできなくなっちゃった。」
友梨に初めての打ち明けた。

「ふ〜ん、でもさ、なんかもったいない。女子の私からみたら、絢音はかわいいし、運動もできるし、羨ましい。
『モテない』なんて、綾音はいつも言ってるけど、自分では気づいてないだけで、あんた、めっちゃ男子に人気あるんだよ?
 小学校から何年経ってる?そんなこともう誰も思わないし、恋したらいいのに。
 絢音のこと、ちゃんと見てくれている人がいるんだから。」
 
友梨がしっかり私の目を見て言うものだから、友梨の言葉が心にささる。

「そうかな...」

「試合のお手伝い、行ってみようかな。」
なんとなく、スタートを切ってみようかと思った。

「いいぞー、絢音。行っちゃえ、行っちゃえ!」

 さっきのちょっと真面目な友梨とは違って、いつものノリのいい友梨に戻っていた。

「そんなノリノリなら、友梨も行かない?」

 友梨もいると心強いんだけど...と、思って誘ってみたが、

「私は先輩とデートだから、ダメ〜。」
と、あっさり断られてしまった。

そして休み時間の終了を告げるチャイムがなる中、

「絢音の彼氏候補が見つかるといいね〜。」友梨が茶化しながら、自分の席に戻って行った。

「それはないかなぁ。」
私は早瀬くんの事を考えつつも、呟く。

 とりあえず、美帆のお手伝いに徹すればいいよね。別に彼氏を探しに行くわけじゃない。  
 
 友梨に言われて変な意識をしてしまった。
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