きみと3秒見つめ合えたなら

〜恭介side〜初恋

 相川先輩を指名した。

...といえば、かっこいいが、実際は練習に疲れすぎて、心の声を思わず発してしまったのだ。

 ゴンちゃんの機嫌が良すぎて、変な盛り上がりになってしまった。

 相川先輩は、やっぱり困っていたが、チラッと見ると、運良く目が合った。

 その間、約1秒。
 やっと、先輩と目があっても、すぐにそらされてしまう。ただその1秒さえも、オレの心を熱くする。

 おそらく、相川先輩はまだオレのことを認識していなかったと思う。

 だから、こんな形ではあるが、今日はかなりのアピールになった。

 オレが初めて相川先輩に会ったのは中2の時だ。

 春の地区記録会の時のことだった。100mの招集場所の近くで、オレは相川先輩と同じ東中の浜野と喋っていた。何の話をしていたかは忘れたが、かなり盛り上がって、招集が始まっていたことに気づかなかった。

 その時「浜野くん、招集あっち。」と浜野を呼びに来たのが相川先輩だった。

「あ、ありがとうございます、相川先輩。」と浜野が言うと、「うん。」と微笑んだ。チラリとオレは相川先輩と目が合うと、軽く会釈した。
 
 目が合ったのはたった1秒くらいだっただろうか。

 相川先輩も軽く会釈をしてくれた。
 
花びらが舞い散る桜の木の前にいた相川先輩がなんとも美しかった。

「あーびっくりした!」
浜野の声で我に返る。
「初めての相川先輩に話しかけられた。」と浜野は続けて言った。

 初めてって、そんなわけないだろと、思っていたけど、オレも入学してまだ相川先輩と話したことがないので、あの時の浜野の発言は嘘ではないだろう。

 今でも、相川先輩は挨拶は返してくれるが、陸上部のジャージを着ていないと、自分の後輩だとわかってない感じもした。
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