きみと3秒見つめ合えたなら
第1章〜恋のはじまり

気になる人

「ファイトー」「ファイトー」
あちこちでかけ声がひびく、いつもと変わらない部活。
ザクザクとスパイクの音が心地よい。

 桜の花も散り、新緑の葉が若々しく、私達の青春の新しい1年の始まりを応援してくれているかのようだ。

 いつもと少し違うといえば、今日から部活に新1年生が入るらしい。

 今年は、男女合わせて25人。
あー、絶対覚えられない。
私は人の顔と名前を覚えるのが苦手。
特に男子においてはー

 私、相川絢音、県立東高校2年。陸上部に所属中。中学時代から短距離を専門にやっていて、地区大会では上位常連。
 訳あって、恋には奥手。だけど、いつかはドラマみたいな恋がしたい...なんて思って、恋愛ドラマを見るのが大好き。

「おーい、全員集合。」
顧問の権田先生、通称ごんちゃんが部員を集める。

「今日から、新入部員が入るぞー。今年はなんと25人だ。みんなで県大会、目指してがんばっていこう。はい、新1年自己紹介。」

 ゴンちゃんは新入生がたくさん入ってご機嫌だ。推定29歳独身のゴンちゃんは、私達にとっては顧問であり、お兄さん的存在でもある。

 一人ずつ始まる自己紹介。
多すぎて、やっぱり明日には忘れちゃいそうだな、なんて思っているが、
いや、そもそも、私はちゃんと聞いていなかった。

 チラリとグランドの向こうのサッカー部を見る。

一瞬、彼と目が合う。
ドキっとして、1秒で、目をそらす。

私は彼が気になっている。
< 2 / 129 >

この作品をシェア

pagetop