きみと3秒見つめ合えたなら
 そんなある日のこと。

「聖斗ー。」
美帆が手招きをする。
休憩中のオレは、ベンチに座る美帆のところへ行く。

「どうした?」
「あのさ、この前さ、家の近くのコンビニで久々に恭ちゃんに会ったんだ。」
美帆が、今日の練習メニューをノートに書きながら、オレに伝える。

「ああ、あそこのコンビニ?」
かっこよくなった恭介に会えて嬉しかったって話か?

「そう。で、恭ちゃんから話しかけて来てさ。なんか中学校入ってからは、なんとなく疎遠になってたからちょっとびっくりしちゃって。」
「へー。」

 美帆はノートに書く手を止めて、オレの顔を見て言った。
「なんかね、絢音のこと聞いてくるわけ。」

「相川のこと?」

 なんで、恭介が相川のことを美帆に聞くんだ?心の奥がザワつく。

「聞いたこと誰にも言わないでって言われたんだけど...
 美帆ちゃん、相川先輩と仲いいの?とか、なんでサッカー部の試合に行ってたかとか、彼氏がいるかとか、いろいろ。」
 と言いながら再び、ノートに練習メニューを書きはじめた。

 言うな、って言われているのに、よりによって、どうしてオレに言うんだよ。

「なんで、恭介がそんなこと美帆に聞くんだよ。」

 あー、わかる。
恭介は相川絢音が好きなんだ。
年下とはいえ、強敵だ。

「好きなのかなぁ...」
美帆が手を止めて、とぼけたように言う。

 もしかして、コイツ、やっぱりオレが相川のこと好きなの、知ってんのか?

「それだけ?」
オレは気のないフリして、返事をする。

 美帆は自分が思っていた返事が返ってこなかったからか、やや不満げに
「それだけ。恭ちゃん、イケメンになってたわー。じゃあねー。」
と言って、さやか先輩のところへ行った。

 恭介、相川のこと好きなんだ...。

 ライバルは同学年だけってわけじゃないのか。

 でも、よりによって恭介かよ。
 イケメン...だよな、アイツ。
 勝てる気がしない。
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