きみと3秒見つめ合えたなら
〜恭介side〜推し
突き抜けるような青空。
まさに体育祭日和。
今日は相川先輩の応援団長になってやる!それくらいの意気込みだ。
部活での全員リレーの一件があってから、相川先輩はやっとオレを認識したようだ。
覚えてもらうのに4ヶ月もかかるか?と思ったが、ゴンちゃんがオレの呟きに気づいてくれなければ、もしかしたら、まだ認識されてなかったかも...と思う。
美帆ちゃんに怪しまれながら、相川先輩の情報は手に入れた。
サッカー部の試合は美帆ちゃんがお願いして来てもらった...と聞いて、安心した。
相川先輩は時々、サッカー部を見ている気がしたので、サッカー部に好きな人でもいるのかと思っていたが、大丈夫そうだ。
「絢音先輩、がんばって〜。」
幼馴染で、同じ陸上部の木村茉莉の声で、思わずテントの後方を見た。
相川先輩先輩だった。
目が合った...気がした。
よし、勢いで行くしかない!
「相川せんぱ〜い、オレも応援してますからね〜。
先輩に届くように声、張るんで、ちゃんと聞いててくださいよー。」
と、体育祭のお祭り気分に任せて言ってみた。
「あ、ありがとね。」
茉莉に返事した時より、明らかに声が小さい。ヤバい、困らせてる?
一瞬、その場が静まり返った気がしたが、クラスメイトに「俺らの応援はA組だろ」と突っ込まれ、もみくちゃにされはじめたため、静けさはすぐに元に戻った。
チラッと相川先輩をみると、美帆ちゃんと話しながら歩き始めていた。
「プログラム5番。次は2年生の女子リレーです。各クラス5名の代表が走ります。みなさん応援よろしくお願いします。」
アナウンスが流れて、駆け足で入場する黄色いはちまきをした相川先輩を見つけた。
「位置について、ヨーイ」
スタートしても、オレは走者ではなく、相川先輩を見失わないように見つめていた。
相川先輩はアンカーだった。
「相川せんぱーい、ファイトー。」
オレの前を駆け抜ける相川先輩にエールを送る。届いてんのかな?
さすが、相川先輩はオレ達のA組を軽くかわしていった。
最後は振り切り、相川先輩のD組が勝利した。
「ヨシ!」
軽くガッツポーズ。
しまった。あからさまに喜んでしまった。
「恭介〜、何D組を応援してんだよ、馬鹿か、お前〜。」
クラスメイトに突っ込まれる。
「オレ、今日は相川先輩推しだからー。」
なんて、冗談ぽく言ってみる。
本当は、冗談ではなくて、本気。
「相川先輩っばっかり言ってるって彼女にチクるぞ!」
クラスメイトに小突かれた。
こうなったら、最後まで相川先輩推しで通すか...やばいかな。
これからはちゃんとA組の応援するか...いや、1回だけだと、ただ、からかっただけに思われないか?
悩んだオレは推し通すことにした。
ノリじゃない。本当に応援したい。
部活対抗リレーが始まる前、待機場所で早瀬聖斗くんに声を掛けられた。聖斗くんは小学校のとき、学童でいつも一緒に遊んでくれて、兄貴みたいな存在だった。
「恭介ー。久しぶり。」
「聖斗くん。久しぶり!聖斗くんもサッカー部で走るの?」
「まあな。ところでさ...」
聖斗くんが聞きいてきた。
「恭介ってさ、...間違ってたらごめん。2年の相川絢音のこと、好きなの?」
まさかそんな事聞かれるとは思わなかった。
「違った?組が違うのに相川のこと応援してるからさ。どういうつもりなんかな?って思って。」
はぐらかすべきか、正直に答えるべきか?なんで聖斗くんが聞いてくるんだ?なんて色々な思考が頭を駆け巡り、迷ったオレから出た言葉は...
「相川先輩のこと、好きだけど、オレ。」
聖斗くんのまっすぐにオレを見る目が笑ってなかったから、正直に答えてしまった。
聖斗くんの頬が緩んだ。
オレは内心ホッとした途端...
「恭介とライバルかぁ。」と聖斗くんがオレを見た。
「え?」
ライバルって。オレと聖斗くんが?
「っていうか、お前、彼女いたよな?」
動揺するオレとは対象的に、聖斗くんはずっとまっすぐオレの目を見ている。
「誰にも言ってないんだけど、結構前に別れてるんだ。聖斗くん、もしかして、相川先輩のこと、好きなの?」
平静を装うも、オレは聖斗くんがライバルということに衝撃を隠せないでいる。
「1年以上、片想いだけど。ガードが硬いから、相川。それよりさ、リレー、負けないからな。
そうだ!オレがさ、もし陸上部を抜いたら、相川のこと、諦めてよ。ライバルは少ないほうがいいから。」
「聖斗くんのお願いでも、無理かな。」
陸上部が勝つ、という自信はあるけれど、
「いいよ」なんて言えるほどの心の余裕はない。
「生意気な〜」と言って、聖斗くんは小学生の時の様にオレの頭をクシャクシャにしてきた。
体育祭は男女ともに陸上部が優勝し、幕を閉じた。
部活対抗リレーでは気兼ねなく、相川先輩を応援できた。
聖斗くんがすごく速くて、一瞬、陸上部を追い抜くかと思って、焦った。
その時は、打倒陸上部と、学校全体が聖斗くんを応援していた。
オレは勝負には勝ったけど、相川先輩をかけた戦いにみんなが聖斗くんを応援したみたいに思えて、なんとなく悔しかった。
帰り道、木村茉莉と一緒になった。
オレ達は、自転車を押しながら坂道を下った。
「ねぇ、恭介?最近、エリとはどうなの?」
エリとは振られた彼女のことだ。
「実は、夏前に振られて、別れたけど...」
「エリは別れてないって言ってるよ?」
「あぁ、そう言ってるんだ、エリは。自分から振っておいて、最近、より戻したいって言われてるんだよ。正直、オレはもう無理かな、って思ってんだけど。」
少し沈黙が続いて、茉莉が聞いてきた。
「無理って、もう好きじゃないってこと?」
「まぁ、そうかな。」
オレが答えたあと、また沈黙が続いた。
「ねぇ、好きな人、できたとか?」
「...」
オレはあえて返事をしなかった。
「絢音先輩のこと、好きなの?」
「...」
「そうなんだ...」
「...」
無言を貫くオレに腹が立ったのか、茉莉は足を止めて言った。
「絢音先輩はやめてよね。」
なんだ、コイツ...と思って、オレはまた返事をしなかった。
茉莉は自転車にまたがると、スピードをあげて、先に進んでいった。
相川先輩の事を好きになって、何が悪いんだ?
茉莉には関係ないだろ?
そう思いながら、どんどん遠ざかる茉莉を見ていた。
まさに体育祭日和。
今日は相川先輩の応援団長になってやる!それくらいの意気込みだ。
部活での全員リレーの一件があってから、相川先輩はやっとオレを認識したようだ。
覚えてもらうのに4ヶ月もかかるか?と思ったが、ゴンちゃんがオレの呟きに気づいてくれなければ、もしかしたら、まだ認識されてなかったかも...と思う。
美帆ちゃんに怪しまれながら、相川先輩の情報は手に入れた。
サッカー部の試合は美帆ちゃんがお願いして来てもらった...と聞いて、安心した。
相川先輩は時々、サッカー部を見ている気がしたので、サッカー部に好きな人でもいるのかと思っていたが、大丈夫そうだ。
「絢音先輩、がんばって〜。」
幼馴染で、同じ陸上部の木村茉莉の声で、思わずテントの後方を見た。
相川先輩先輩だった。
目が合った...気がした。
よし、勢いで行くしかない!
「相川せんぱ〜い、オレも応援してますからね〜。
先輩に届くように声、張るんで、ちゃんと聞いててくださいよー。」
と、体育祭のお祭り気分に任せて言ってみた。
「あ、ありがとね。」
茉莉に返事した時より、明らかに声が小さい。ヤバい、困らせてる?
一瞬、その場が静まり返った気がしたが、クラスメイトに「俺らの応援はA組だろ」と突っ込まれ、もみくちゃにされはじめたため、静けさはすぐに元に戻った。
チラッと相川先輩をみると、美帆ちゃんと話しながら歩き始めていた。
「プログラム5番。次は2年生の女子リレーです。各クラス5名の代表が走ります。みなさん応援よろしくお願いします。」
アナウンスが流れて、駆け足で入場する黄色いはちまきをした相川先輩を見つけた。
「位置について、ヨーイ」
スタートしても、オレは走者ではなく、相川先輩を見失わないように見つめていた。
相川先輩はアンカーだった。
「相川せんぱーい、ファイトー。」
オレの前を駆け抜ける相川先輩にエールを送る。届いてんのかな?
さすが、相川先輩はオレ達のA組を軽くかわしていった。
最後は振り切り、相川先輩のD組が勝利した。
「ヨシ!」
軽くガッツポーズ。
しまった。あからさまに喜んでしまった。
「恭介〜、何D組を応援してんだよ、馬鹿か、お前〜。」
クラスメイトに突っ込まれる。
「オレ、今日は相川先輩推しだからー。」
なんて、冗談ぽく言ってみる。
本当は、冗談ではなくて、本気。
「相川先輩っばっかり言ってるって彼女にチクるぞ!」
クラスメイトに小突かれた。
こうなったら、最後まで相川先輩推しで通すか...やばいかな。
これからはちゃんとA組の応援するか...いや、1回だけだと、ただ、からかっただけに思われないか?
悩んだオレは推し通すことにした。
ノリじゃない。本当に応援したい。
部活対抗リレーが始まる前、待機場所で早瀬聖斗くんに声を掛けられた。聖斗くんは小学校のとき、学童でいつも一緒に遊んでくれて、兄貴みたいな存在だった。
「恭介ー。久しぶり。」
「聖斗くん。久しぶり!聖斗くんもサッカー部で走るの?」
「まあな。ところでさ...」
聖斗くんが聞きいてきた。
「恭介ってさ、...間違ってたらごめん。2年の相川絢音のこと、好きなの?」
まさかそんな事聞かれるとは思わなかった。
「違った?組が違うのに相川のこと応援してるからさ。どういうつもりなんかな?って思って。」
はぐらかすべきか、正直に答えるべきか?なんで聖斗くんが聞いてくるんだ?なんて色々な思考が頭を駆け巡り、迷ったオレから出た言葉は...
「相川先輩のこと、好きだけど、オレ。」
聖斗くんのまっすぐにオレを見る目が笑ってなかったから、正直に答えてしまった。
聖斗くんの頬が緩んだ。
オレは内心ホッとした途端...
「恭介とライバルかぁ。」と聖斗くんがオレを見た。
「え?」
ライバルって。オレと聖斗くんが?
「っていうか、お前、彼女いたよな?」
動揺するオレとは対象的に、聖斗くんはずっとまっすぐオレの目を見ている。
「誰にも言ってないんだけど、結構前に別れてるんだ。聖斗くん、もしかして、相川先輩のこと、好きなの?」
平静を装うも、オレは聖斗くんがライバルということに衝撃を隠せないでいる。
「1年以上、片想いだけど。ガードが硬いから、相川。それよりさ、リレー、負けないからな。
そうだ!オレがさ、もし陸上部を抜いたら、相川のこと、諦めてよ。ライバルは少ないほうがいいから。」
「聖斗くんのお願いでも、無理かな。」
陸上部が勝つ、という自信はあるけれど、
「いいよ」なんて言えるほどの心の余裕はない。
「生意気な〜」と言って、聖斗くんは小学生の時の様にオレの頭をクシャクシャにしてきた。
体育祭は男女ともに陸上部が優勝し、幕を閉じた。
部活対抗リレーでは気兼ねなく、相川先輩を応援できた。
聖斗くんがすごく速くて、一瞬、陸上部を追い抜くかと思って、焦った。
その時は、打倒陸上部と、学校全体が聖斗くんを応援していた。
オレは勝負には勝ったけど、相川先輩をかけた戦いにみんなが聖斗くんを応援したみたいに思えて、なんとなく悔しかった。
帰り道、木村茉莉と一緒になった。
オレ達は、自転車を押しながら坂道を下った。
「ねぇ、恭介?最近、エリとはどうなの?」
エリとは振られた彼女のことだ。
「実は、夏前に振られて、別れたけど...」
「エリは別れてないって言ってるよ?」
「あぁ、そう言ってるんだ、エリは。自分から振っておいて、最近、より戻したいって言われてるんだよ。正直、オレはもう無理かな、って思ってんだけど。」
少し沈黙が続いて、茉莉が聞いてきた。
「無理って、もう好きじゃないってこと?」
「まぁ、そうかな。」
オレが答えたあと、また沈黙が続いた。
「ねぇ、好きな人、できたとか?」
「...」
オレはあえて返事をしなかった。
「絢音先輩のこと、好きなの?」
「...」
「そうなんだ...」
「...」
無言を貫くオレに腹が立ったのか、茉莉は足を止めて言った。
「絢音先輩はやめてよね。」
なんだ、コイツ...と思って、オレはまた返事をしなかった。
茉莉は自転車にまたがると、スピードをあげて、先に進んでいった。
相川先輩の事を好きになって、何が悪いんだ?
茉莉には関係ないだろ?
そう思いながら、どんどん遠ざかる茉莉を見ていた。