きみと3秒見つめ合えたなら
 この前、早瀬くんに話しかけられてから、少し何かが解れて、男子との話も前ほど逃げ腰ではなくなった。
 自分から話しかけるのは少し勇気がいるが、話しかけられてももう、昔の様に気配を消したりしなくなっていた。

 早瀬くんは陸上部に来た日は、いつも私に声をかけてくれる。

 早瀬くん、このまま陸上部に入ればいいのに...なんて思ったり。 

 休憩中に茉莉ちゃんが小声で聞いてきた。

「この前言ってた絢音先輩の好きな人って、早瀬先輩ですか?」

「な、何?急にー」
かなりの動揺。

「早瀬先輩と絢音先輩が話してるのみると、お似合いだなぁって思っちゃって。」

「そ、そんなことないから。」
「先輩、顔赤いですよー。」

 と、2人で騒いでいると桐谷くんがやって来た。

「茉莉、何楽しそうに相川先輩と話してるんだよ〜。」

 茉莉ちゃんの目が一回り大きくなって、桐谷くんを見る。

「あ、恭介?絢音先輩ね、早瀬...」

 何か言いかけた茉莉ちゃんを遮るように
「茉莉ちゃん!な、何でもないよね?」

と私は言った。

「相川先輩がどうしたの?先輩推しのオレとしては気になるんですけど。」

 桐谷くんの推し発言も気にならなくなった茉莉ちゃんは、

「ダメだよ、恭介ー。いつまでも絢音先輩推してたって、絢音先輩には好きな人いるんだからー。」

 桐谷くんと話せてご機嫌な茉莉ちゃんが、言ってしまった。

「え?」
周りが静寂に包まれる。
3人の間に微妙な空気がながれる。

「それでも、オレ、相川先輩推しなんで。」
そう低い声で言った桐谷くんは、静かに練習に戻っていった。

「なにそれ。」茉莉ちゃんが毒づく。

 なにそれ...私も心の中で呟く。
 私推しって何よ。
 そんな本気な声で言わないでよ。

 私と茉莉ちゃんも気まずくなり、
「私、調子に乗っちゃったかな。
先輩、すみません。」

「うん。大丈夫だから。」
と言って、私達も練習に戻った。
 
 なんか、モヤモヤする。
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