きみと3秒見つめ合えたなら
 あれから私と茉莉ちゃんと桐谷くんはぎこちない。

 何も知らない早瀬くんが時々、私に声をかける。

「陸上部の練習もあと1週間かぁ。」
「早瀬くん、そのまま陸上部に変わったらいいじゃん!」
景子が、通りすがりに会話に入ってきた


「でもなぁ、サッカー部も大事なんだわ。」
真面目に答える早瀬くん。

「相川は?」
「何?」

「オレに陸上部に残って欲しい?」
「え?」

 数秒の沈黙。
 こういう冗談さえも、本当に私は何も言えずに黙ってしまう。

 早瀬くんがそんなこと言うとは思わなくて。
 だけど「残って欲しい」なんて、本当の気持ちをうまく冗談っぽくも言えない。

 戸惑っていると、景子がフォローしてくれた。

「もう、早瀬くん、真面目な絢音をいじめないでよー。」

 早瀬くんの真面目だった顔がほころんで、
「ごめーん、冗談。あと1週間、よろしくな。」

 そして、リレーメンバーの元へ戻った。
顔が赤らんでいるのが自分でも分かる。

「ねぇ?絢音?
早瀬くんって、絢音のこと、好きなんじゃない?」
景子が聞いてくる。

「え?」
 1年前、そんなことを早瀬くんが言ってたことはあったけど、その後何にもないし、ここ最近まで、まともに話もしなかったし。

「そ、そんなことないんじゃないかな?」
景子に自分の気持ちが見透かされているのでは?と思うと心臓がバクバクしてきた。

「絢音はどうなのよ?」

「私?わたしは...」

 私...好きかも...
 でも...
  言葉を選んでいると...

「私、好きかも。早瀬くんのこと。
松村先輩よりカッコイイって最近思ってきて。絢音、応援してくれる?」

 私の鼓動はますます速くなる。
 そして、ドーンと崖に落とされた気分だった。

「う、うん。」
そんな返事しかできなかった。

 今さら、「私も好き」なんて言えるわけがない。
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