きみと3秒見つめ合えたなら
 なんだか居心地の悪い部活に足が向かない。

 ダルい。

 でもあと、大会まであと少しなんだから部活に行かなきゃと、ここ数日気合をいれている。

「絢音、顔色、悪いけど?」
友梨が心配そうに私のおでこに手を当てる。

「やばっ。絢音、熱あるんじゃない?」
「熱?」
 そっか。熱、あるのか私。 

 滅多に風邪を引かないから、たまにかかるとすごくしんどい。

 保健室で熱を測り、早退した。

 ちょうどよかった。
なんとなく部活に行きたくなかったから。

 家で寝ているとスマホの通知音がなる。
 美帆?

『熱、大丈夫?課題、持っていくけど?』
『ありがとう、何時くらいになる?』
『部活終わって18時半ごろかな。』
『了解!』
 美帆、ありがとう...と目覚ましを18時に合わせて私は一眠りした。

 ピンポーン。

 あ、美帆だ、と玄関を開けると、そこには美帆と桐谷くんが立っていた。

「ごめん、絢音。付いて来るって聞かなくて...」

「先輩、大丈夫ですか?」

「あ、うん。もう熱は下がったから。」
なんで桐谷くんがいるわけ?
会いたくないのに。

「聖斗も来たら?」と美帆。
「え?早瀬くん?」

 門の外で早瀬くんは待っていたみたいで。

「あんまり押しかけても...大丈夫?」
と言いながら早瀬くんが顔をのぞかせる。 

「私、絢音と話したいから、ちょっと恭ちゃん、聖斗のとこ行っててくれる?」
「は〜い。」

 大人しく早瀬くんのところに行く桐谷くん。

「もう、私の方が熱、出そうなんだけど!あの2人、バチバチなんですけど!っていうのは冗談だけど...」

 美帆が呆れながら私に訴えてくる。

「この状況、どういうこと?」
私の方が聞きたい。


 どうやら元々美帆は私に秘密にして、早瀬くんと一緒に課題を届ける予定だった。

 ちょうど陸上部の練習が終わったので、美帆が、早瀬くんを誘いに行ったところで、桐谷くんに出くわした。

「美帆ちゃん、どうしたの?相川先輩、今日部活、休んでるけど?」

「知ってる。聖斗と課題届けようと思って。聖斗いる?」

「オレも行く!」

「は?恭ちゃん、関係ないでしょ?」

「お願い。美帆ちゃん。」

「恭ちゃん、彼女いるんでしょ?彼女に怒られるよ。」

 2人が押し問答しているところに早瀬くんが現れて、
「何やってんの?お前ら。」

「あ、聖斗。早く、行こ。」
「行くって?」

「絢音のとこ。課題届けに行くって約束したでしょ?」

「聖斗くん、オレも行くから。」
「なんで?」

 ...という流れがあったらしく。
小学校以来、3人は一緒に行動することとなったらしい。

「絢音、明日は学校きてよ。明日もこんなのに付き合ってる暇ないんだから、私。」

「なんか、ごめん。もう、大丈夫。」

「冗談よ、モテる女は大変ねー。じゃあね、絢音。」

「だから、推しネタだってば。」

 帰り際に門から
「せんぱ〜い、お大事にしてくださ〜い。
部活でまってま〜す。」
と言う声が聞こえた。

 ちょっと気持ちが弱ってるときに、心配してくれると、勘違いしちゃうじゃん。

 押しが強くて、はじめはちょっと苦手だった桐谷くんと、とにかく優しくて、私にトキメキをくれた早瀬くん。

 そして、両極端な2人の間で、ずっと眠っていた私の恋心が目を覚まし、揺れ動くことになる。
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