きみと3秒見つめ合えたなら
 ある日、相川は熱があるとかで早退したらしい。

 相川がいない陸上部に練習しに行く意味があるのか?と思ったが、権田先生の期待を裏切るわけにもいかず、柴田にも偉そうに言ってしまったので、一応陸上部の練習にも参加した。

 長かった部活も終わり帰ろうとした時、何やら押し問答している2人を見た。

「何やってんの?お前ら。」

「あ、聖斗。早く、行こ。」
美帆がオレの腕を引く。

「行くって?」

「絢音のとこ。課題届けに行く約束したでしょ?」

 あー、そうだ、美帆に言われたけど、半分冗談だと思っていた。

 オレなんか行って大丈夫なのかよ、と思っていたら、恭介が
「聖斗くん、オレも行くから。」と言ってきた。

「どういうこと?」

 何で恭介も行くわけ?

 今度は3人で押し問答。
 なんか昔を思い出して笑えてきて

「いいよ、3人で行こうぜ。」
と言ってしまった。

「聖斗がいいのなら...」と美帆もしぶしぶOKを出した。

 相川の家までの道のりは、昔みたいで結構楽しかった。
 恭介とライバルだということも忘れて3人で馬鹿な話も久しぶりにした。

 意外にあっと言う間に相川の家についた。

「オレ、ここで待っとくわ。たくさんで行っても迷惑だろ?」
なんか気恥ずかしくて、門の外で待つことにした。

 恭介は平気な顔して相川に会いに行った。

 なんか癪に障る。

 オレは気を紛れさそうと、スマホでサッカーの動画を検索していた。

 少し経って、美帆がオレを呼んだが、遠慮した。
「あんまり押しかけても...大丈夫?」と門から相川を見た。少し微笑んでくれた...気がした。

 
 しばらくして恭介だけが戻ってきた。

「聖斗くんは大人だね。」

「なんだよ、それ。1個しか違わないじゃないか。」

 オレはスマホの画面を見ながら答える。

「オレ、相川先輩のことになると必死になっちゃうんだよね。今まで彼女もいたけど、向こうからくるからさ、自分の気分でどうにでもなったわけ。」

 なんだよ、それ、自慢か?

「モテるやつはスゴいねー。」
感じ悪いかな?と思ったが恭介を見ずに言った。

「聖斗くんはさ、自然体でさ、男の余裕みたいなのを感じるよ。あー、オレなんか、空回りなんだよなぁ。」

 余裕じゃないし...オレは恭介をみた。

「余裕なんてないよ。
恭介が相川といるところとかみたら、やべーって。
 陸上部のことだってさ、本当はうちの顧問は反対したんだ。
 でも、相川いるじゃん?
 そんな理由言えないけど、必死に理由つけて顧問にお願いした。
 結構、オレだって必死なんだぜ。
 恭介だけには渡したくない。」

 自分でもびっくりするほど強気なことを言った。
 誰もが認めるモテ男に向かって。
 
 でも...なぜか恭介だけは嫌なんだ。
 あいつは彼女をとっかえひっかえしてるなんて聞くし、相川が幸せになれる気がしないから...なのか?
 ただ、弟のように思っていた奴に、取られるのが、悔しいから...なのか?
 自分でも理由は、はっきりしないが、とにかく、恭介と相川が付き合うとか、考えただけで死にそうになる。


「お待たせー」美帆が帰ってきた。

「何話してたんだよ」

美帆に聞くと、
「ヒ・ミ・ツ」と行って自転車を押し始めた。

 恭介が
「せんぱ〜い、お大事にしてくださ〜い。部活で待ってま〜す。」と叫んでいた。

 素直で羨ましい。オレもその勇気が欲しい。


 次の日、相川は大事を取って1日部活を休んだ。


 今日はなぜかバトンパスが合わない。

 いつも通りの歩数なのに、バトンが届かない。

「半歩、縮めようか?」恭介に提案する。
「いや、このままで。オレ、絶対渡すから。」

 相変わらず強気だな、と思ったが、恭介はいつも本番に強い。オレは恭介を信じた。


 相川は、翌日いつもの様に部活にきた。


 オレは柔軟体操をしている相川に思い切って声をかけた。
「相川、一昨日はごめんな、なんか。体調悪いのに、気を遣わせて。」

「大丈夫。課題、ありがとう。あれ?早瀬くん、今日、サッカー部は?」

 部活の最初からオレがいることはなかったので、相川は不思議に思ったようだった。

「あと3日だから、この3日は陸上部に専念させてもらおうと思って。」

「そうなんだ、がんばろうね。」
相川の笑顔が眩しい。

「おう。」
その笑顔だけで1000倍くらい頑張れる。

 そして、自然に会話ができていることが何よりうれしい。
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