きみと3秒見つめ合えたなら
 早速その日、サッカー部の練習を終え、陸上部に行ってみた。

 権田先生が嬉しそうにオレを紹介した。

 美帆に相川には内緒にしてくれ、と頼んであったので、相川は不思議そうにオレを見ていた。

 チラッと目が合った。
 サッカーの試合以来かも。

 それから、オレは1日1回は相川に話しかけることを心がけた。

 だんだん、相川の硬いガードも隙を見せるようになってきた時、オレは思い切って聞いてみた。

「相川って...恭介と仲いいの?」
「え?」

 突然の質問にびっくりしたようだった。

「体育祭で、相川のこと、めっちゃ応援してただろ?アイツ。」

 自分から聞いておいて、オレもかなり心臓がドキドキしている。

「桐谷くんとは仲いいの。」なんて言われたら、もう陸上部にくる意味がなくなる。

「あれは、私の事、からかってただけ、みたいな。体育祭限定のネタ?周りに突っ込まれて、盛り上がるみたいな。彼女もいるみたいだし。」

 そんな風に思ってたのか?恭介はマジなのに。

「あ、彼女...
相川、大丈夫?そんなの、困ってたんじゃないの?」
彼女はいない...と相川に伝えることをオレはしなかった。
性格悪いな、オレ。


 少し考えて、相川は
「大丈夫」と言った。

「そっか。ならいいんだ。
相川いつも、大丈夫って言うけどー」

(大丈夫じゃない時は、言えよ。オレが恭介にちゃんと言ってやるから。)と言いたかったが、緊張しすぎて言葉が出てこなかった。

「...何でもない。じゃあな。」
不思議そうにオレを見る相川を残して、オレはサッカー部の更衣室に向かって行った。
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