きみと3秒見つめ合えたなら
第3章〜恋はしない

こじれる気持ち

 早瀬くんにも、桐谷くんにも、直接「スキ」だと言われたことはない。

 周りに乗せられて、2人の事が気になって、勝手に私が2人の間で盛り上がっていた。

 恋愛初心者のくせに高いハードル設定しちゃうから。



 燃え尽き症候群...だろうか。

 県大会があるというのに、何となく部活に身が入らなかった。

 そのせいもあって、私は県大会ではベストのタイムを出すこともできず、終えた。

 ちなみに島田くんが戻った男子リレーは準決勝まで進み、敗退した。


 早瀬くんがもう陸上部にはいない。

 早瀬くんが話しかけてくれるのが嬉しかった。

 早瀬くんが、陸上部に来ていた時は自然体で話せるようになっていたのに、今はまた、廊下ですれ違っても目も合わせられず、なぜか避けてしまう。


 スキ...なのに。早瀬くんのこと。
なのに、素直になれない。

 本当は、前みたいにお話できたらな...って思っているのに、できない...。

 地区大会のあの日、くるりと背を向けた早瀬くんが遠い存在な気がして、自分から行くのがやっぱり怖くて。

 自分が傷つかないように、早瀬くんをスキという思いをまた、閉じ込めようとしていた。

 そして恋に心を閉ざした私は、また男子とは一切絡まない昔の私に戻ってしまった。

 だけど、それはそれで、心穏やかに過ごせるわけで...

 恋に憧れてたけど、
恋はしないほうが楽、みたい。
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