きみと3秒見つめ合えたなら

〜聖斗side〜淡い期待

 陸上部を去ってから、サッカー部の練習も忙しく、もう陸上部には一切顔も出さなくなっていた。

 権田先生からは、未だに陸上部に変わらないかと、柴田には内緒でアプローチされているが。

 相川ともあの大会以降は、廊下ですれ違うくらいで、特に話したりすることもない。

 いつだったか、美帆と恭介と相川のお見舞いに行ったのが、夢だったのかと思うほど、また相川との距離が開いてしまった。

 最近の相川は以前の様にガードが硬い。

 バレンタインに相川から...何て夢のまた夢。

 恭介は部活絡みでもらったりするんだろうな、あぁ、羨ましい。


 今年のオレはなぜかモテた。

 美帆が言うには、体育祭の部活対抗リレー、陸上部との二刀流、最近のサッカーで活躍...が要因らしい。

 皮肉な事に全部相川のおかげだ。

 相川の為に部活対抗リレーは全力で挑んだし、二刀流の動機の9割はいやもっとか...相川がいるから。

 そしてサッカーでの活躍は、相川がいる陸上部のお陰で走力がアップしたためだ。

 だけど、相川がオレの想いに気づくことはない。

 何人かには、義理ではなく、本気で告白された。

 もちろん、全部断った。

 匠海には、
「告白されたら、ちょっと気持ち、ゆるがない?全く響かない相手より...」
と、言われたが1mmも揺るがない。

 好きなのは相川だけなんだから。


 翌日の部活が始まる前に美帆に呼び止められた。

「聖斗、昨日、絢音から預かったんだけどー」

「え?相川?」心がおどる...


「陸上部の1年からのバレンタインの...って、もしかして、絢音からって期待した?」
美帆が茶化す。

「そ、そんなことないから。で、何だよ。」
図星なのが恥ずかしく、話を逸らす。


「1年からだって、これ。モテますねぇ。」
「ありがとうって言っといて。」
感じ、悪いな、オレ。

「聖斗、いいの?絢音のこと好きなんだよね?もっとガンガンいかないと、恭ちゃんに取られちゃうよ?
 でも、絢音って難しいよね。閉ざしちゃってるもんねー。
 絢音もさ、自分に自信持てばいいのに。」

 美帆はそう言いながら、お茶を作りはじめた。
 よく働くやつだな...なんて思いながら、ちょっと励ましてもらいたくて、美帆に弱気なオレの気持ちを言ってみた。

「恭介かぁ。あいつなら、相川の心、開けそうだよな。」

 弱気なオレに美帆がバシッと背中を叩いてはげました。
「がんばってよね。」

 美帆にバシッとやられると、いつもは「よし、やるか!」なんて気持ちになるが、相川絡みになると、その効果は半減するみたいで。

 どう頑張ったらいいんだよ...

 やっぱりモテる男は自信があるのか、ガンガン行くし。

 オレはそんな自信がないから...

 と、いつまでも弱気なオレがいた。
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