きみと3秒見つめ合えたなら

好きなのは...

 美帆からスマホにメッセージが届いた。

『聖斗が、ありがとうって。』
『美帆、ありがとうね。』
『聖斗が、絢音からかな、なんて一瞬、喜んでたけど(笑)』

 う〜ん、なんて返せばいいのよ。

 悩んで返信を返せないでいると、美帆からさらに、メッセージが来た。

『聖斗が絢音からのチョコかもと、喜んだのは本当なんだけど...それ以外の聖斗の話、知ってる?』

 早瀬くんのこと?
 早瀬くんの何?
 すごく気になる...。

『早瀬くんの何?』

『景子ちゃんが早瀬くんに告白したらしいんだけど。』

 え?景子が?
確かにカッコいいとは言っていたけど。
応援してって言われたけど。
私、景子から何も聞いてない。

『それ本当?』
『本当。その後のことは知らなくて。
もしかしたら、絢音、なんか景子ちゃんから聞いてたのかな?って。』

『何も聞いていないけど...』
胸騒ぎがする。

『断ったと思うんだよ。でも、景子ちゃんってちょっと強引なとこあるから、聖斗、押し負けてないかなって。』

 景子のことは嫌いじゃない。
幸せになって欲しい。
だけど、早瀬くんは...
早瀬くんだけは...

 こんなこと言える立場じゃないけど。
どうしよう。

 その日はうまく寝付けなかった。
景子に聞けばいいけど、聞けない。
気がつけば朝になっていた。

 バレンタイン後の学校は
誰が誰に告白したとか、誰と誰が付き合うことになったらしい...とかそんな話題で持ちきりだった。

 部活で景子に会うも、普段と変わらない感じだった。
ただ
「ごめん、絢音。一緒に帰れないから。」
と言われた。

 いつも一緒に帰ってたのに。
 帰れないときは理由教えてくれたのに。

 やっぱり、早瀬くんとうまくいったのかな。

 一人で校門を出て、坂道を下っていると

「お疲れさまでしたー。あれ?先輩、今日、一人ですか?」 

 桐谷くんに声をかけられた。

 あの日、私に「要らない」と言った桐谷くんとは違って、テンション高めだった。

「うん。景子。用事があるみたいで。」
と適当に伝えると、桐谷くんは自転車を降りた。

 そして、
「少しだけ、一緒してもいいですか?」
と言った。

 急な展開で、何も返せず、ぽか〜んとした顔で立ち止まってしまった。

「一緒って、方向...ち、違うよね?」

「オレ、遠回りしてもいいですけど?」

「遠回りしなくていいから、っていうか
なんで一緒...」

 自分でもパニックで何を言ってるかわからない。

「わかりました。遠回りなんてしませんから。そこまでで。」

 若干、押し負けて
「そこまででなら...でも、でも誰かに見られたら、誤解されちゃう...ほら、彼女とか。」
いつまでもグチグチ言っている私。

「誤解ってなんですか?
オレ、何にも気にしませんから。
彼女って、夏に別れてますけど?」

 あの美人な彼女と、あのあと別れたの?
いや、でも、無理だって。
一緒に帰るなんて。 
と、グダグダしていた時、

「おー、恭介ー。一緒にかえろーぜー。」
と、おそらく桐谷くんの同級生が声をかける。

「ど、どうぞ。」
私は桐谷くんにささやいた。

「先輩、さようなら。」
と言って桐谷くんは同級生と帰っていった。なんか、怒ってる?

 私はホッとしたのと、なんか取り残された寂しさと、なぜか、一緒に帰ってみればよかった...なんて後悔もしたりして、なんとも複雑な心境だった。

 久しぶりに一人で帰る家までの道のりが長く感じた。


 そして、次の日も、その次の日も...結局、1週間ほど景子は一緒に帰らなかった。
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