きみと3秒見つめ合えたなら
 だが、その後なかなかチャンスがない。
相川先輩はいつの間にか、帰っている。

 なんでも、相川先輩は着替えるのが早いらしい。
 想像...はしないように、と自分に言い聞かせている。

 オレは部活が終わると速攻で着替えるようにした。
 
 数日して、ようやく相川先輩を見つけた。

「相川先輩!やっと見つけた!」

「な、なに?」
先輩がびっくりしている。

「今日も佐山先輩いないんですよね?
喧嘩でもしたんっすか?」
ずっと一人で帰っている先輩の様子が気になる。

「大丈夫、喧嘩なんてしてないよ。景子、彼氏できたのかも。」

「そうなんですか?
で、先輩は一人で帰ってるんだ。」

 佐山先輩に彼氏がいたとはオレも知らなくて...でもこれからも相川先輩が1人で帰るのなら、オレ、めっちゃチャンスあるじゃん!

「今日こそは、そこまで、一緒に帰っていいですか?」

「うん。」

「え?いいんですか?」
あまりにすんなりOKしたので、聞いたオレの方がびっくりしている。

 せっかく一緒に帰れたのに、緊張し過ぎて、話せない。たくさん、話したいのに、共通の話題が無さすぎて...。
 2人とも沈黙のまま、坂道を下っていた。

 どうしよう。 
 なんで、何にも話せないんだよ、オレ。
 シュミレーションしとけばよかった。

 そして坂道を下りきって、分かれ道が現れた。
「じゃ、ここで。」
相川先輩が別れを告げる。

「あの、先輩?いや、何でもないです。
おつかれさまです。」

「おつかれさま。」

 本当は、「また一緒に帰りましょう」なんて言いたかった。
 会話もないんじゃ、一緒に帰ってる意味ないじゃん。もう絶対、一緒に帰ってもらえないかも...オレはかなりへこんだ。

 
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