きみと3秒見つめ合えたなら
 景子と仲直りができて、合宿にも前向きに参加できそうだ。

 春合宿当日、私たち後発隊は駅に集合した。
桐谷くんを始め、1年生たちは遠足気分でテンション高めだ。

「みんな揃ってる?途中『湊』で乗換して、『御山公園』まで行くからね。」

 本当は御山公園で待ち合わせでもよかったが、去年みんなの到着がバラバラで、先輩が困っていたのを思い出して、学校近くの駅に集合した。

「じゃ、好きに乗っていいけど、1年、御山公園だからな。乗換、間違えんなよー。」
山崎くんが注意を促し、みんなで電車に乗り込んだ。

 春休みなので電車は様々な年齢層で、やや混雑していた。

 さっきから時々、お尻の辺りに何かが当たる。混雑しているから...と最初は気にしていなかった。

 だけど、だんだんお尻と太もものあたりを撫で回されている、のではないか?と気づき始めた。

 やだ、気持ち悪い。
 でも、後ろを振り向くのも怖くて。

 チラッと山崎くんを見たけど、彼はスマホゲームをしていて、私に気づかない。

 でもでも、思い過ごしかも...次の次が「湊」だから、それまで、様子見る?

 そうだ。ちょっとずつ移動してみよう。

 そう思って移動するも、手の気配は変わらない。

 気持ち悪い...時々腰にもその生温かい手がきて、ジャージの中に手を入れようとしているのがわかった。

 どうしよう...

『東湊、右側の扉が開きます』

 あと1駅...とギュッと目を閉じたとき、誰かに手を引かれて、私は扉の外に出た。

 え?降りるの、ここじゃない...んだけど。

「大丈夫?相川」
手の主の声は聞き覚えのある声だった。
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