きみと3秒見つめ合えたなら

〜聖斗side〜積極的に

 佐山を避けるように放課後、帰宅していたが、春休みになれば、そんな心配もほとんど要らない。

 でも、相川との距離も縮まる気配がない。美帆にも、ガンガン行けと言われたが、そんな機会もない。

 オレはサッカーの県代表に選ばれた。
東高で初らしい。
 多分、相川のおかげ。陸上部で練習することがなかったら、こんなに走るのが速くならなかっただろうし。

 その合宿が春休み初日から始まる。
学校から離れるから、多分、相川を春休み中に見かけることもなくなる。

 恭介が羨ましい。


 合宿当日、オレは県代表に選ばれた他校の友達と昼食を食べて、14時の集合に間に合うように行く約束をしていた。

 家の近くの駅から電車に乗った。
春休みだからか、家族連れも多く、やや電車は混雑していた。

 ぼんやり電車に乗っていたが、学校最寄りの駅で、東高陸上部がいるのが見えた。
大会でもあるのか?

 オレの乗っていた車両に、相川と山崎と1年数名が乗って来た。
 春休みは会えないかも...と思っていたので、ラッキーだった。
 相川に声を掛けたかったが、少し遠くて無理だった。

 オレは相川が気づかないかと、ずっと相川を見ていたが、全く気づく気配がない。
「気づけ!」と念を送ったが、あたりまえだが、無理だった。

 急に相川がキョロキョロしだした。
駅、間違ったか?
 でも、他の部員に焦ってる様子はない。
しばらく見ていると、しっかり見えないが、顔色が悪い気がする。

 少しずつ近づいてみた。
 やっぱり顔色が悪い。
 相川はチラチラ山崎を見ているが、山崎はスマホに夢中で気づいていない。

 もう少し、近づくと、相川が困っている理由がわかった。


 どうする?オレ。


 犯人の手を掴むこともできる...かもしれない。だけど、それだと、相川が傷つくんじゃないか?

 こっちに引っ張ったら、山崎たちに気づかれたら、それも気まずい。

『次は桂、右側のドアが開きます』

 そうだ、一瞬、電車を降りて、またすぐ乗ればいい。この場所から逃れれば、相川を助けられるだろう。
 よし、次の駅で。

 オレは相川に近づいた。
「相川」
小声で声をかけたが、気づかない。

 相川はギュッと目を閉じている。

『次は東湊...』
オレは相川の手首を掴んで、電車を降りた。

「大丈夫?相川」
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