きみと3秒見つめ合えたなら
 今日で宿泊も最後なので、夕食は「おつかれさま会」をするのが恒例。

「なんかこれが終わると、部活もあと少しなんだなぁって思うよね。」

「確かに。あと3ヶ月くらいだよね。」

 景子としんみりしながら消灯時間を迎えた。

 私は今日の桐谷くんと走った事が楽しくて、誰かに言いたい気分だったが、さすがに誰にも言えない。


 まだ眠れなくて、星でも見てみようかと、民宿の玄関を出た。
 このあたりは高い建物がなくて星がきれいに見える。
 そうだ。
 玄関の外にはちょうどベンチがあったはず。

 私はベンチに座って音楽でも聴こうかとスマホを操作していた。 
「茉莉?」
誰かの声。

 振り返ると桐谷くんだった。
「あ、ごめん、茉莉ちゃんと約束?」

「うん、なんか来てって。先輩…そのウインドブレーカー、茉莉のじゃない?
背中にMARIって書いてありますよ。」
そう言って、桐谷くんは私の横に座った。

「え?やだ。間違って羽織ってきちゃった。ちょっと、眠れなくていただけだから、じゃ、私、帰るね。」

 私は2人の邪魔をしちゃいけない、と思ってベンチから立ちあがる。

 その時、桐谷くんが私の、いや、茉莉ちゃんのウインドブレーカーを掴んだ。

「え?何?」
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