きみと3秒見つめ合えたなら
「行かないで。先輩。」
今まで、見上げて見ていた桐谷くんを初めて見下ろした。
まっすぐ私を見る瞳が潤いに満ちていて、何故かドキっとした。
「でも、茉莉ちゃんと約束してるんでしょ?」
「まだ時間じゃないから。先輩といたい。」
何?何言ってるの?
いつものノリとは違う、子犬感満載の桐谷くんを目の前にして、思わず私はベンチに座ってしまった。
「先輩?」
「な、なに?」
ドキドキが止まらない。
「相川先輩、合宿に来る前の電車、聖斗くんと降りてましたよね?」
え?
見ていたの?
「見てたの?おんなじ車両だったっけ?」
「違う。電車からホームにいる2人が見えた。」
「そうなんだ。うん。ちょっと...」
うまく理由を言えず、言葉を選んでいると、
「たまたまですか? もしかしてあの駅で降りる約束とかしてたんですか?」
「た、たまたまだよ。ほんと。」
「でもなんで聖斗くんがあそこにいて、相川先輩が体調が悪いって...山崎くんだっていたのに。」
桐谷くんは納得がいかない感じで続ける。
「実は...」
私は桐谷くんにあの日の出来事を話した。話しているうちに、あの気持ち悪い手の感触を思い出してしまい、怖くて、気がつくと目には涙が溜まっていた。
だけど、こんなところで泣くわけにはいかない。私はバレないようにうつむく。
「ごめん、先輩。嫌なこと思い出させて。
でも、オレ、めっちゃ嫉妬するんですけど。」
と桐谷くんが強めに言った。
「あの場にオレがいたら、先輩の事、オレが守ったのに。」
あまりにも直球で、返す言葉が見つからない。
「先輩、こっち見て。ちゃんとオレを見て。」
ドキドキしすぎて、見れるわけないじゃない。私は溜まった涙をこっそり拭う。
「先輩、オレ、好きなんです。」
え?
突然の告白にびっくりして顔をあげる。
目の前には桐谷くんの顔があった。
いつもの私なら、きっと、目をそらすのに、私は何も考えられず、彼をじっと見つめていた。
「桐谷くん...」
しっかりと真正面からみたのは、初めてかもしれない。瞳の奥が揺れていて、吸い込まれそう...と思った。
桐谷くんの顔が近すぎて、ドキっとして、思わず瞬きをしたとき、
私の唇に柔らかなものが触れた。
そのまま1秒、2秒、3秒...
その間、何が起きたか、確かめるのが怖くて、目が開けられなかった。
ピロリン...スマホの通知音で、
私は我に返った。
と同時に唇に冷たい夜風があたり、目を開けると、さっきと同じように桐谷くんの顔があった。
「先輩、好きです。」
桐谷くんがもう一度言った。
私は放心状態だった。
何も声にならない。
「『推し』はネタじゃないですから。本気で好きなんです。」
桐谷くんが立ちあがる。
「じゃあ、先輩、おやすみなさい。」
と言って、桐谷くんの手が私の頭にポンポンと触れた。
今のって何?
私、キスした?
ようやくかわいい後輩だと思えてきたのに。桐谷くんは、いつも私の心を乱す。
今まで、見上げて見ていた桐谷くんを初めて見下ろした。
まっすぐ私を見る瞳が潤いに満ちていて、何故かドキっとした。
「でも、茉莉ちゃんと約束してるんでしょ?」
「まだ時間じゃないから。先輩といたい。」
何?何言ってるの?
いつものノリとは違う、子犬感満載の桐谷くんを目の前にして、思わず私はベンチに座ってしまった。
「先輩?」
「な、なに?」
ドキドキが止まらない。
「相川先輩、合宿に来る前の電車、聖斗くんと降りてましたよね?」
え?
見ていたの?
「見てたの?おんなじ車両だったっけ?」
「違う。電車からホームにいる2人が見えた。」
「そうなんだ。うん。ちょっと...」
うまく理由を言えず、言葉を選んでいると、
「たまたまですか? もしかしてあの駅で降りる約束とかしてたんですか?」
「た、たまたまだよ。ほんと。」
「でもなんで聖斗くんがあそこにいて、相川先輩が体調が悪いって...山崎くんだっていたのに。」
桐谷くんは納得がいかない感じで続ける。
「実は...」
私は桐谷くんにあの日の出来事を話した。話しているうちに、あの気持ち悪い手の感触を思い出してしまい、怖くて、気がつくと目には涙が溜まっていた。
だけど、こんなところで泣くわけにはいかない。私はバレないようにうつむく。
「ごめん、先輩。嫌なこと思い出させて。
でも、オレ、めっちゃ嫉妬するんですけど。」
と桐谷くんが強めに言った。
「あの場にオレがいたら、先輩の事、オレが守ったのに。」
あまりにも直球で、返す言葉が見つからない。
「先輩、こっち見て。ちゃんとオレを見て。」
ドキドキしすぎて、見れるわけないじゃない。私は溜まった涙をこっそり拭う。
「先輩、オレ、好きなんです。」
え?
突然の告白にびっくりして顔をあげる。
目の前には桐谷くんの顔があった。
いつもの私なら、きっと、目をそらすのに、私は何も考えられず、彼をじっと見つめていた。
「桐谷くん...」
しっかりと真正面からみたのは、初めてかもしれない。瞳の奥が揺れていて、吸い込まれそう...と思った。
桐谷くんの顔が近すぎて、ドキっとして、思わず瞬きをしたとき、
私の唇に柔らかなものが触れた。
そのまま1秒、2秒、3秒...
その間、何が起きたか、確かめるのが怖くて、目が開けられなかった。
ピロリン...スマホの通知音で、
私は我に返った。
と同時に唇に冷たい夜風があたり、目を開けると、さっきと同じように桐谷くんの顔があった。
「先輩、好きです。」
桐谷くんがもう一度言った。
私は放心状態だった。
何も声にならない。
「『推し』はネタじゃないですから。本気で好きなんです。」
桐谷くんが立ちあがる。
「じゃあ、先輩、おやすみなさい。」
と言って、桐谷くんの手が私の頭にポンポンと触れた。
今のって何?
私、キスした?
ようやくかわいい後輩だと思えてきたのに。桐谷くんは、いつも私の心を乱す。