きみと3秒見つめ合えたなら
 朝のジョギングはなかなかきつかった。

 朝だけじゃなく、寝不足で1日中きつかった。

 桐谷くんも寝てないって言っていたけど。やっぱりキツいのかな。

「最終日だぞ、ベストだせ、桐谷。」
ゴンちゃんが喝を入れていた。

 私は気がつけば、桐谷くんを目で追っていた。時々、目が合ってしまう。
私は急いで目をそらす。
 あまりにも見つめられると、昨夜の桐谷くんの目を思い出してしまうから。




 そして春合宿が終わった。
 私達は御山公園で解散して、それぞれの家路につく。

「相川先輩、一緒に帰りましょう。」
帰る準備をしていると、自然な感じで私の隣に来て片付けをし始めた桐谷くんが小声で言ってきた。

 隣に来ただけで、心臓が止まりそうなのに、こんなことをさらりと言ってくる。
私は思わず周りを見渡してしまった。

 幸いみんなそれぞれの場所で荷物のチェックをしていて、私たちの会話に気づく感じはない。

「い、一緒になんて、無理、無理。ほら、みんないるし。」
動揺した私は、桐谷くんの顔も見ないで返す。...というより、顔は見れない。

 もっとちゃんと、桐谷くんの気持ちを知りたいという思いはあるのだけど、一緒に帰るなんて、他の部員の目もあるし、現実的に考えて無理。

 今の私は感情よりも理性が働いている。

 それに、こんなにドキドキしてたら、心臓が持たないよ。

「じゃあ、偶然、装います。」
と言って、桐谷くんは私の隣を離れた。

...偶然って?何?

 彼の一言一言が、私を更にドキドキさせる。思考が働かない。

 恋愛上級者は、恋愛初心者を惑わすのが上手い。
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