きみと3秒見つめ合えたなら
「絢音、帰ろっか。」景子が私を誘う。
「うん。」
チラリと桐谷くんを見ると、どうやら茉莉ちゃんと話をしている。

 昨日、あの2人、はどうしたのだろうか?
 まさか、茉莉ちゃんにもキスしたりしたんだろうか。
 時間が経つにつれて、私は昨日の事が信じられなくなって、やっぱり、桐谷くんは誰にでも...?なんてことを考えてしまう。

 そんな考えが頭の中を駆け巡り、私は景子の話を聞いていなかった。

「絢音、聞いてる?」
「え?あ、ごめん。寝不足で聞いてなかった。」

「御山サッカー場で、サッカー県代表の合宿してるんだってね。ちょっと覗いて行かない?」
「え?な、なんで?」
かなりうろたえる私。

「早瀬くんも参加してるのよ。私一人だと、また嫌がられそうだから、絢音も。」

「え?私は...」
 メッセージも返せてなくて、何となく、今は早瀬くんに会いづらい私は遠慮しようと思った。

「絢音と仲直りしたところ、早瀬くんにも見せたいの。ね、行こ。」

「え、う、うん。」

 なんで景子が恋敵の私を誘うのかもわからない。
 もう頭が真っ白。
 どんな顔で早瀬くんに会えばいい?

 今は、桐谷くんのことで頭がいっぱいで、早瀬くんのことを考える余裕がなくなってきている。

 私はただただ景子に連れて行かれるがまま、サッカー場に来てしまった。 

「やっぱり早瀬くん、カッコイイ。
すぐにわかっちゃう。」
 
 私も同様に、すぐに早瀬くんを見つけた。広いグラウンドのどこに行っても、すぐにわかる。嬉しいはずなのに、胸が苦しい。

 早瀬くんと、目が合ってしまった。
そっと私は目線をはずして、景子を見た。
「景子、私、早く帰るようにって家から連絡あったから、帰るね。」

 ウソをついて、私はサッカー場を足早に去った。

「相川!」
ゲートを出たとき、早瀬くんが走って追いかけてきていた。
「早瀬くん...」
「相川、合宿終わった?」
「うん。」まっすぐ早瀬くんを見れない。

「大丈夫?」
「え?」
「元気ないから。何かあった?」
早瀬くんは、いつでも私を気にかけてくれる。
「大丈夫。ちょっと練習ハードで疲れたのかな。」
「だったらいいけど。電車、大丈夫?佐山と一緒の方が良くないか?」
「もう、大丈夫。」

 少し沈黙があって、
「...あいか」早瀬くんが何かを言おうとしたけど、私はそれを遮って
「じゃ、帰るね。早瀬くん、頑張ってね。」と、早瀬くんに背を向けた。

 苦しい。早瀬くんに優しくされると心がきゅっと締め付けられる。

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