きみと3秒見つめ合えたなら
「絢音!言ってよー。」
隣のクラスから友梨が、昼休みに私の元へやって来た。

「なんの話?」
「彼氏の話。」
「彼氏?誰の?友梨の?」

 私がぽかーんとしていると、友梨が続けた。

「いつから?あの推しの子と。」
何の話か全くわからない。

「え。違うの?」
友梨がどんどん話を進める。私はついていけてない。

「あの相川絢音に彼氏がいるって、うちの学年ですごい噂になってるよ。しかも相手が2年の部活の後輩だって。」

 え?なんでそんな話になっているの?部活の後輩って桐谷くんのこと?

「どういうこと?
私に彼氏なんてできるわけないじゃん。」

 どうしよう。なんでそうなってるの? 
 嫌な予感がして、鼓動が早くなる。

「なんだ。違うの?ま、そうだよね。絢音が急にあの子と付き合うわけないかー。どこからそんな噂流れたんだろうねー。」

 友梨はちゃんと納得してくれたけど。
 学年中の噂ってどういうこと?

 私は急に不安になった。

 その日、部活へ行くと、いつもとは変わらない桐谷くんがいた。
 桐谷くんは噂の事は知らないのだろうか?
 
 そもそも、友梨はたまたま桐谷くんの事を言っていただけで、噂の相手が桐谷くんかどうかもわからない。

 確かめる術もなく...私は不安にかられる。
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