エリートSPはようやく見つけたママと娘をとろ甘溺愛で離さない
 あの夜から、既に数ヵ月。

(ちゃんと待っていられなくて、ごめんなさい)

 梓は心の中で謝り、小さな家の中を見回した。

 がらんとしている、独り暮らしだった部屋。

 もう荷物は全部運び出してしまって、梓の足元にあるボストンバッグだけが、最後の荷物だった。

 がらんとしてしまった部屋は、梓の気持ちを表しているようだ。

 喉の奥に、不意になにか、熱いものが込み上げそうになった。


 どうしてこんなことになっちゃったんだろう。
 こんなことになるなんて思わなかった。
 きっと幸せが待っていると思っていたのに。
 和臣さんを待っていて、素敵な未来があると思ったのに……。


 胸の中にそんな気持ちが溢れたけれど、そんな気持ちを抱く資格は、もう梓にはないのであった。

 だから呑み込んだ。

 喉の奥に込み上げた、熱い涙は呑み込んだ。

 ごくっと、必要以上に喉を鳴らして、顔を上げる。


 行こう。
 私の行くべきところなのかはわからないけれど、もうここにはいられないから。
 私がいても相応しいような場所へ、もう行こう。
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