【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。

 ***

「ねえ、君はこの婚約、どう思う?」

 完璧に整えられたお茶会。

 不思議なことに、メルシアが食べたいな、と思っていた王都で話題のスイーツ、そして好みにドンピシャな香りと風味のミルクティー。

 この時のメルシアは、やはり形ばかりの婚約者に対してでも、フェイアード侯爵家のもてなしは完璧だよね、という感想しか持っていなかった。

(今思えば、あれはランティス様からの最上級の歓迎だったような気がする)

 ほとんど会話のないまま、30分経たないうちに、メルシアを置いていなくなってしまう婚約者ランティス。
 その代わりに、いつも来てくれる白い大きな犬が、メルシアの話し相手だ。切ない。

「この婚約は……。受けてはいけなかったんじゃないかな」
「キュ、キュウン……」

 切なく鳴いた白い犬。
 あの時、メルシアは、まるで同情してくれているように感じたけれど、後から考えれば……。

(ああああ、本人を前に、私はなんてことを!!)

 けれど、メルシアは、決して婚約が嫌だったわけではない。父親同士が親友で、復興の手助けをして、今後のメルセンヌ伯爵家の復興によりフェイアード侯爵家にも旨味がある縁談。そういう解釈だったのだ。

 魔獣のせいで、ボロボロにされたメルセンヌ伯爵領。けれど、元々は交通の要所であり、肥沃な土地を持つ。

 魔獣の脅威が去った今、あと十年もすれば、元の賑わいを取り戻すに違いない。

「……私。私のこと、好きでいてくれる人と結婚したい」
「ワフ……」

 白い犬は、シュンッとしてしまった。
 メルシアの気持ちを代弁するように。

 そして、次のお茶会で、ランティスの口から婚約破棄が告げられたのだ。
 メルシアは、それがランティスの気持ちなのだと信じて、素直にそれを受け入れた。
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