【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
いつもの庭園に案内される。
婚約者のお茶会は、天気のいい日はいつも庭園で行われていた。
そこにはすでに、いつものように、かわいらしいお菓子とティーセットが準備されていた。
まるで、あらかじめ準備がされていたみたいに。
「え、準備がいいですね?」
「メルシア様が、いつ来てもいいように準備を整えておくように、と命を受けております」
「…………え?」
「……いつも、待っておられましたから」
「ワ、ワフ!」
言葉を遮ったようなラティに、ハイネスのグレーの瞳が、まっすぐに向かう。
その視線は、まるで親が子どもを見るような優し気なものだ。
「…………少し、おしゃべりが過ぎたようです」
なぜか、ハイネスはラティとメルシアへ、交互にお辞儀をすると、去っていく。
薔薇があふれる優雅な庭園には、ラティとメルシアだけが取り残されたのだった。