【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。

 つまり、狼姿の時には、ランティスは狼になりきっている。そういう認識でいいのだろう。
 でも、とメルシアは首をかしげる。

「え? でも、おかしいですよ」
「…………ああ、そうだな。やっぱりおかしいし、気持ち悪いだろうな」
「ち、違います! 違うんです」
「では、何が違うというんだ」

 こんなことを言っていいのだろうかと、しばらくの間、メルシアは逡巡した。
 けれど、ランティスが狼姿のラティになることを教えてくれたのは、生半可な覚悟ではなかったことも理解している。
 だから、隠し事は、もうなしだ。

「だって、初対面から、ラティは私のことが好きだと、前面に押し出してきてましたよ」
「…………それは」
「――――ランティス様?」

 上目遣いにメルシアが、体を折り曲げて見上げれば、分かりやすくランティスは体を震わせた。
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