【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
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婚約破棄を決意した理由は、それだけではない。
騎士の仕事は、危険を伴う。逆恨みした人間から、あるいは敵国から、次期騎士団長と目されるランティスの弱点が狙われる。
それに、メルシアは、メルセンヌ伯爵領の騒乱のせいで、社交界から縁遠いままだ。
だが、フェイアード侯爵家の嫡男であるランティスとの婚約を継続する限り、社交界から離れたままということもできないだろう。
純粋なメルシアを、水面下での腹の探り合いばかりの社交界に連れ出すのは、はばかられた。
――――だが、それ以上に……。ランティスと、メルシアが一緒にいるのは不都合がある。
少なくとも、ランティスが騎士の職務を全うできない程度には。
ランティスの目の前にいるベルトルトは、焦りをにじませている。
いつも、ニコニコと腹の読めない笑顔をしているベルトルトにしては珍しい。
髪の毛をかき上げれば、その直後にパラパラと鮮やかに指の間から零れ落ちていく赤い色彩。