【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
ほんの少しの沈黙のあと、ベルトルトは口を開いた。
「それで、これからどうするおつもりですか。ことの詳細を教えてもらえるのですか?」
「……ああ。なぜかわからないが、俺はメルシアのそばでは、30分も経つと、狼の姿になってしまう」
「……その力、コントロール出来ていたではないですか」
「メルシアに、初めて会った時からだ。彼女の前でだけは、この力を制御できない」
ベルトルトは、なぜあんなにも頑なに、ランティスがメルシアのそばにいることを拒んでいたのか、ようやく理解した。
「騎士であることよりも、彼女のそばを選ぶということですか」
「それは……」
「いいえ、そもそも隊長が騎士になったのも、フェイアード伯爵領を初赴任地に選んだのも、メルシア様のためでしたね」
「…………」
誰よりも大事に思っていて、いつも陰ながらメルシアを助けているのに、煮え切らない態度。
かと思えば、副隊長であるベルトルトにすら、突き刺さりそうなほどの牽制をかけてくる。